六月二十九日 サン=テクジュベリの誕生日

 カクヨムに身を置く以上、無視をしてはいけない日、その八。

「星の王子さま」「夜間飛行」でお馴染みのフランス人パイロット、サン=テクジュベリは明治三十三年(一九〇〇年)六月二十九日にフランス・リヨンで伯爵家の子として生まれた。


 幼い頃からカクことが大好きだった少年は、十二歳で初めて飛行機に乗せてもらいパイロットを志す。しかし文学少年は、どうやらカクことをやめなかった。


 二十六歳には本を出版し始める。

 もちろんパイロットも現役だ。自身の経験を生かした作品は、割とコンスタントに受賞経歴を積んでいく。

「パイロットがチャラチャラ文学してんじゃねえ」という反感を買う一方で、「あなたのファンです。だから戦いたくありません」という敵軍パイロットも居たという話はカクヨム的に熱い。


 昭和十年(一九三五年)のサハラ砂漠不時着事故は、のちの「星の王子さま」エピソードにふんだんに盛り込まれている。

 そして四年後、第二次世界大戦時の前線を飛び、そしてフランスとドイツの講和が成立すると、翌年そのままアメリカへ亡命する。前出の星の王子さまはアメリカ生まれだ。


 すっかり厭世的なっているかと思いきや、アメリカでも自由フランス軍の航空部隊に所属し、再び前線を滑空している。

 従順とは言い難い、割と自分勝手なところが垣間見える彼のラストフライトは昭和十九年(一九四四年)。コルシカ島に向けて単機出撃し、そのまま消息を絶った。

 彼の痕跡がようやく発見されたのは平成十年(一九九八年)のことだ。マルセイユ沖の海中で、サン=テクジュベリ本人の名前と妻の名前、それから「星の王子さま」の出版社の銘が入ったブレスレットが見つかった。


 その後、機体の残骸が発見され製造社と記帳番号が一致し、ようやくサン=テクジュベリの戦死が確定した。当時の状況や証言などから、機体事故ではなく撃墜死だったようである。

 しかし、本人の遺骨は未だに発見されていない。

 彼の遺した王子の言葉のとおり、真実は心の目でしか見れないものなのかもしれない。

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