六月二十五日 ガウディの誕生日

 スペインを代表する建築家、アントニオ・ガウディと言えば何が思い浮かぶだろうか。

 色彩豊かな石造りのジャングルの如しグエル公園。

 バルコニー手すりにワカメでも巻き付いているのかと思う特徴的なカサ・ミラ。

 私個人としてはバルコニーに頭蓋骨を嵌めているようなデザインのカサ・バトリョが好きだ。何で石があんな滑らかなフォルムをしているのだ。どうやって窓枠設置したんだ。そして対比する壁面モザイクの素晴らしさたるや、である。


 しかしやはり、ガウディの死後九十年以上が経つ現在もなお建設中の贖罪教会サグラダファミリア(正式名称:聖家族贖罪教会)は、ガウディの代表作に他ならない。

 実は、サグラダファミリアの建設計画と設計は当初、別の建築家が無償で担当していた。当時全くの無名であったガウディは二代目である。


 一説によると、初代は依頼主である民間カトリック団体と意見が折り合わず建設途中で辞任してしまったそうだ。若きガウディにとっては棚からぼた餅、割れ鍋からパエリア(造語)だったことだろう。

 彼は七十四歳で交通事故に遭うまで現場に通い続けたという。(出勤途中で路面電車に轢かれ、そのまま亡くなった)まさにライフワークとして取り組んでいた未完成作品である。


 スペイン内戦とその後のどん底経済で、カネは無いわ、ガウディの設計図が離散紛失するわで幾度となく困難に見舞われてきた建設計画だが、スペインと言えば、バルセロナと言えばという屈指の観光名所である。

 二〇〇五年に(ガウディ作品群の一つとして)ユネスコに世界遺産登録されてからは、観光客ががっぱがっぱお金を落としてくれるので、現代の最新建設技術をふんだんに取り入れた結果、二〇二六年完成予定という目処がついた。(それまでは「いつ終わるか分かんない」状態で頑張ってた)


 世界遺産登録されてのち、サグラダファミリアの建設許可がバルセロナ市に受理されておらず一世紀以上も無許可建築を続けていたというニュースは世界中に衝撃(あるいは笑撃)を与えた。

 名誉のために補足しておくと、当時の管轄自治体には一八八五年に建設許可を申請しているが、その後吸収合併されたのち、バルセロナ市に申請内容が引き継がれていなかったそうだ。行政にも大いに問題がある。


(サグラダファミリアのあるスペイン第二の都市バルセロナはカタルーニャ地方の州都だが、当のカタルーニャは古代からギリシャになったり、ゲルマンになったり、イスラムになったり、君主国になったり、スペインになったり、フランスになったり、オーストリアになったり、またスペインになったりしながら、最近は「独立してぇわ」って言ってるややこしいお土地)


 アントニオ・ガウディ氏はもちろん純然たるカタルーニャ人であるタラゴナっ子である。(古代ローマの時代から存在する古都だが、五世紀に入り初代イスラムさんにフルボッコされて廃れちゃったから、じわーっとバルセロナに州都が移った経緯がある)

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