放たれた暗黒
夜。黒が深くなるにつれて自分が沈んでいくような時間。海琴は僕をそんな夜に呼び出した。いつもの灯台だった。いつもより表情が翳って見えるのはこの夜の暗さのせいだろうか。
刹那の静寂の後、君は口にする。
「私、もう死にたいの。」
風が止まった。全てのぐちゃぐちゃな記憶が僕の中に入ってきた。君の言葉が重みを持って季節外れの雪のように僕の中に積もってゆく。
僕は君を守りたいだなんて、僕の勝手な願いだ。あの頃の懐かしさに溺れる前に僕の罪に殺される。海琴はずっと黒い海を眺めている。
こんな大きな黒い塊どこにあるだろうか。
僕はずっとこんな黒い夜に白い雲を探した。
君にかけるべき声が見つからなくて窒息しそうになる。何が正答なのかがわからない。
言葉にできない、できない、できない。
僕はなんて言えばいいんだろう。
僕が君を殺してしまったような感覚になる。
君はまだ隣にいるのに、死んでしまったような翳りを持つ。もうこんな夜は嫌だ。僕も逃げ出したかった。僕は君を守りたいだなんて、本当に勝手な願いだな...。
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