第9話

キアラは自身の助けなしで正解に辿りつた事に感心し、大きく頷く。


「ああそうだ。あいつはそういう意味での平和を願い実行している。世界の人口が減少の一方を辿っている原因の一部はあいつだと思ってくれ」


それは害となる存在は生き物とさえ見ておらず、駆逐しに行っているから。


最後にそう締めくくったキアラはさてどうしようかと考えようとしたところでレンが待ったをかける。


「なんでユリイナを危険と言ったのかは分かりました。ですが、そこから俺が壊れるというのにつながるのは何故ですか?何も関係は…」

「気付かないのか」

「何にですか」


さっきまで評価をしていたが、どうもあの頭の回転の速さが通常という訳でもないらしい。

多少残念に思いながらレンの評価をキアラは下げる。


この波のあるのが獣人の奴隷化を早めというのだが。

大事なところで察しが悪く頭の回転が悪いところが。


「いいか。あいつは世界平和の為に害となるものは駆除していると言っていただろ」

「はい」

「だからだ」

「は?」


思わず素の口調が出てしまったレンを咎めず、キアラは溜息しながら丁寧に紐をほどいていく。


「はあ…獣人の地位がどうして転落したか知ってるか?」

「…それは勿論」


若干苦々しい表情でレンは頷く。

それは言いたくもない、思い出したくもない事だったからだ。


「あれですよね、数十年前突然様々な場所で獣人の半分以上が贓物をまき散らした状態で見つかり、それぞれの側に『獣人は世界のゴミだ。害悪だ』と殺された獣人の血で書いてあったからですよね」


何も悪くないのに突然周りの全てが見下すようになった。

これほどの悪夢はないと言うように吐き捨てたレンにキアラはうーんと唸る。


「まあ…及第点か」


絞り出した言葉に驚いたのはレンだ。

目を少し見開き、口を半開きにして何か自分にミスがあったのかと先程の言葉を振り返る。


キアラはその様子を痛まし気に見ていたが、結論から先に言うことにした。


「その事件の犯人がユリイナだ」

「は?」


今度こそ、レンの脳がフリーズした。

ゆっくり処理しようとするも、幾つも問題が引っかかってしまい思うように考察が進まない。


「いや、だけど…当時ユリイナは生きていないし…」

「そう、それが違うんだ」

「失礼を承知で言います。まどろっこしく言わないでもらえませんか。俺は魔女様と違って、持っている情報が少ないんです」


感情が高ぶっているレンにキアラは言うタイミングをミスったかと内心で盛大な舌打ちをした。


折角獣人がいたから真実を伝えてあげようとしていたが、予想通りこの少年は既に精神が半壊している。


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