第6話

澄み通るような声なのにどこかババくささを感じさせる女はそう言って突然現れました。


あ、ババくさいとは言葉の綾です。本心ではそんなこと思っていませんよ。

とても気高く、自信あふれる尊敬している師です。


「全く、これだから最近の若者は…魔女を舐めてもらっちゃ困るな。その程度朝飯前だ」

「ま、まじょ、さま?」


呆然とした様子のレンさんにキエラ様は不敵に笑いました。


「おうとも。ワタシこそ最古の魔女…キエラ様だ」

「え?え?え?」

「キエラ様、突然お越しいただきありがとうございます」

「…ユリイナは相変わらず皮肉にしか聞こえない事をホイホイ言うな」

「私が?まさか」


なんと心外な。皮肉なんて一度も言ったことがないですよ?

今のも言葉通りの意味で、突然ですけど来てくれたのはとても嬉しいという意味ですが。


「…まあこのねじの取れてる弟子はさておき。お前、ポポーが欲しいんだな?」

「は、はい…」

「よし、じゃあ今からワタシのウチに来い」

「わかりまし…え?」

「私も魔力を渡しましょうか?」

「いや、今日はまだ魔法を全然使っていないから大丈夫だ」


腕を伸ばすキアラ様はにいっと笑うと、指を鳴らす。

豪ッと音を立てて風が渦巻き竜巻のように私たちを囲う。


焦ったようにレンさんが声を上げる。


「こ、これ不味くないですか!?俺ら細切れになってしまうのでは…!」


風でよく聞こえませんが、不安になっている様子は分かりました。

何か伝えたほうがよさそうですが…風に声を乗せてしまってはいくら相手が獣人でも声は届かないでしょうね。

…『拡声魔法』


「大丈夫ですよ。これはちょっとした魔法発動の演出みたいなものです。安心して身を任せてください」


届いたらしく、風の乱れが段々となくなっていく。

数秒後には完全に抵抗をやめ、キアラ様が声を張り上げた。


「では早速行くが、何かしら受け身を取る準備はしておけ」

「は?」


視界が一転して、次の瞬間にはログハウスの中にいた。


ただし空中に浮遊している状態であったので、魔法が解除される音がすると途端に重力が戻った。


ドスンと落下する音とカツンと着地する音が同時にする。


「いたた…」


背中から落下したのか痛そうに顔を顰めるレンさんをキアラ様は見下ろす。


「忠告しただろう。受け身を取る準備をしろと」

「そうは言われましても…」


そうですね…初見では少し厳しい要求だったと思います。

私が魔法をかけて差し上げたら防げたかもしれません…私のミスですね。申し訳ないです。

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