第3話

見た目的に、魔法学校の中等生でしょうか?

着ている服は制服ですね。

その制服は見覚えがある…というか、私の学校のものです。


私の先輩に当たるんですね…助けなければ。

流血が遠目でも分かるぐらいなので、急がないと手遅れになる可能性があります。


…顔バレを恐れないのかって?


この森はそこまで珍しいものではないので、誰もが通ります。その心配は無用でしょう。


とは言っても、言い訳は用意しておかないといけませんね。向かう間にでも考えておきましょう。


風に乗っていた体を急転換させる。

しかし、抵抗なんてありません。何故なら、その風向ごと変えましたから。

スピードが落ちていない事がそれを証明しています。


そんなの不可能だと言いたい人もいると思いますが、魔法だからなんでも可能です。

魔法があれば可能性は無限。


勿論出来ない人もいますが、可哀そうなことにそうですか、としか言えません。


人それぞれ限界はありますから。強いて相手を苦しませるのはお門違いというものです。


それにしても、近付いて気がつきましたが…この方、獣人ですね。


でもおかしいです…獣人は基本ハイスペックであるので、こんなところで倒れているのはちょっと変ですね。


という事は、捨てられたという事でしょうか?または魔物の囮にされた、か。


…酷いことです。なんて酷い事でしょう。

前者にしても後者にしても、人が関わっているのに変わりはないです。


それより、声をかけてみますか。


「こんにちは、獣人さん。大丈夫ですか?」


返事無し。

ま、予想通りですけれど。


血まみれですし、出血死になる前に回復をかけませんとね。


「『ハイヒール』」


淡い光に包まれたと思ったら、獣人の身体が癒されていく。


魔物に切り裂かれたと思われる傷が塞がれ、内出血すらも治される。


光は粒子となって空へ散っていった。


再び獣人に向き直る。


「もしもーし?大丈夫ですか?」

「ん…?」


何も反応のなかった獣人の瞼が動く。

やがて、虚な目で私を捉えた。


「だ、れ…?」

「こんにちは、魔法学校の中等生の方。傷はもう大丈夫ですか?」

「きず…?あっ…!」


思い出したかのように飛び起きる獣人の方。

ですが、病み上がりでそんな風に動いてしまったら…


「っ…!」


ま、倒れますよね。

慌てて駆け寄り身体を起こすのを手伝う。


「あ、ありがとう…。しかし、オレは自分でも分かるぐらい重症だったはずが…」

「治癒させてもらいました。勝手を御許しを」

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