31話 バックファイアは返ってくる


 運良く死なずに走ってるうちに、貴族居住区へと辿り着いた。




 そこは俺のゴーズフレアと風の絶対者の無差別攻撃のダブルパンチで見るも無惨だった。




 「加工魔法ガスボンベ! 」




 ポンポンポンとガスボンベが三つ出来た。




 しかしガスボンベと言っても見た目だけで、ボンベの中に入ってるのは空気だ。


 構造がちゃんとしてない分、効力が弱いが、通常のガスボンベより大分軽い……多分。




 「空気が入ったタンクにホースを繋いでそこから空気を吸う……考えましたですね。」




 「ああ、けど作りは雑だから過信は禁物な」




 そして三人は地獄へ赴く。


 生きるか死ぬか、出来れば生き残る為に……








 炎が酷い。自業自得だが。




 ここまで走ってきた王都と比べると格段に人が少ない。




 まぁ燃えてる所からは逃げるわな。




 「……あれはっ! 」




 セレーネが何か見つけたように駆け出す。


 俺とリィリィも後を追うと、セレーネが半分焦げてて半分生身の死体を抱き抱えている。




 「セレーネ、惨い死体に同情するのは分かるですですが、そんな余裕無いですですよ。」




 いつもの罵声の調子とは違う、優しい口調で諭すが、セレーネは動かない。




 「おい、余裕無いって言ってるですよ! 」




 リィリィがキレてセレーネの背中を蹴る。


 するとセレーネは死体を取り落とし、




 「これ、私の父ですわ……」




 「———ッ! 」




 俺は一瞬で察した。


 俺の所為だ……この、惨い———


 俺がゴーズフレアを使ったせいでセレーネの父が……




 「うっ、おえぇ———」




 と、シュレイドが胃の中身を吐きかけた時だった。




 ガスっ!




 リィリィが俺の腹に膝蹴りを入れた音だった。




 「今じゃ、ねーです! 」




 リィリィが声を張り上げる。


 いつものキレとは違う、本気のソレに萎縮する。


 萎縮ついでに出掛かってたゲロが引っ込んだ。




 「……はぁっ、あっ———」




 セレーネは抱えていた死体を火の中に投げ捨てた。




 「見間違いでしたわ、そもそも、ゴーズフレアが出た時点で両親が住んでる元家は燃えてて、今頃丸焦げになってないとおかしいですもの。」




 目がいいセレーネが見間違える訳がない。


 気丈に振る舞おうとする彼女の声は悲痛だった。




 「偉いですですよ、セレーネ。」




 リィリィがセレーネの肩を軽く叩く。


 走るしかない。ゲロカスみてぇな死にたい気分を振り切って———








 王城に行き着いた。


 王城に火の手は無く、また、風の絶対者の攻撃の痕も少ない、殆ど元々の姿だ。




 この異常事態で、大したダメージがない、それも王城となれば怪しさは満点だ。




 城内は殆どもぬけの殻で、衛兵一人居ない。




 カツカツカツと響く足音を煩わしく思いながら、静かが過ぎる城内を探索する。




 2階のテラスに二つの人影があった。




 一人は煌びやかな格好、そして何よりその王冠が彼が何者なのかを示している。


 もう一人は跪き、震えていた。




 そして王冠の人影は、ゆっくりとテラスの手すりによじ登り、落ちた。




 距離があって声や言葉は聞こえないが、数泊置いた後に聞こえたゴチャッという音が嫌にへばり付いた。




 「う、うわあああああああ」




 それは、テラスから走って逃げ出す男の声も聞こえない程に———




 !?




 「それだあああああああああああああああああああああああああ! 」




 「……うるさいですわよ。」




 煩わしそうにセレーネがこちらを見る。




 「おもっ、思い付いたんだ! 風の絶対者を倒す方法を! 」




 早く伝えないと……


 運悪くここに絶対者の攻撃が来るかもしれない。


 早く、早く———




 「———ッ! 」




 セレーネ、絶句。


 数拍後、彼女は口元をジャキリと凶悪に歪ませて———




 「説明なんていりませんわ。何でもしますから、とっととこの地獄をぶち壊して下さいませ。」




 「ですね! 」




 リィリィも口を指で広げて笑顔を作って見せた。




 なんて、なんとゆう……




 説明なんてしないでいいと、




 なんとゆう信頼だろうか。




 答えなければならない、否、答えたい!








 ———信頼に答える為、シュレイドは宣言する。




 「このゲロカスみてぇな惨状に、ゲロカスみてぇな回答をくれてやるぜ! 」


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