6話 食料問題!!!


 「それにしてもお腹が空きましたわね……」

 「ホントですよ」


 「俺なんてこの世界来てから水も飲んでねーぞ」

 「あら、それだったら私ももう3日は食べてないですわ! 」

 「ワタシも最近は全然活きがいい精力食べれてないですですよぉ〜」


 腹ペコパーティーだった。三人揃ってとぼとぼ歩く。

 夜の森ん中だからどっちに向かってるか分かんねーけど。


 「精力を食べるって言うとリィリィって種族サキュバス? 」

 「ええ、まぁ色々あって純粋なサキュバスじゃないですけどね」


 「ロリサキュバスと言うやつですわね! もっきゅもっきゅ」


 「良い響だな……っておいセレーネ何食ってる!? 」

 「そこに生えてたキノコですわ! あげませんわよ?」


 暗くてよく見えないが、セレーネの口元から鮮やかな赤色が覗く。


 「ばっ、バカ! 今すぐ吐け!それ毒キノコだぞ!」


 俺は咄嗟にセレーネの口元へ手を伸ばした。


 「なっ! 食い意地の汚い男は嫌われますわよ!ドクキノコなんて嘘の食材まででっち上げて……」


 もしかしてこの女、毒キノコを知らねーのか!?


 「クソみたいな箱入り娘設定持ち出して来やがって……いいから吐け! 」


 セレーネの力が意外と強い、早く吐かせないと手遅れになる!


 「二人旅になっちゃいますですねシュレイドさん。えへへ///」

 「そこぉ! 早々に諦めんな!こっち手伝ってくれよ!」


 「うっ、なんだか視界が虹色になってきましたわ……」


腕の中で青い顔をするセレーネ。


 くそっ、最後の手段だ!

 ドっ!


 「ぐえっ! 」


 腹パンチ、この手に限る。


 「おええええええええ」


 鳥や動物達が鳴く夜の森に、セレーネの嘔吐音がこだまのように響くのだった……




 「口ん中すっぱいですわ……お腹も痛いし……」 

 「悪かったって」


 俺はセレーネをおぶっていた。

 筋力強化の魔法のお陰で重くは感じないが、暴れるのはやめて欲しい。


 「シュレイドさんとの二人旅が……ぐすん。ク〜ソで〜すよ〜」


 性格が悪い、そして顔がいい幼女が俺の横でとぼとぼ歩きながら唸った。


 あれからもまともな食料を手に入れられず、結局日が登ってしまった。

 日差しは木々に遮られ、僅かな木漏れ日ばかりがシュレイド一行の道の先を照らしている。


 そろそろ空腹が限界だ、せめて昼までには飯にありつきたい。

 と言うか森の中で現在地が分からないからそもそも遭難だ。


 「まぁそれは最悪森を焼き払えばいいか……」

 「魔王みたいな事言うですね……」


 「そうだ! お金で食料を買おう!」


 「空腹で頭がおかしくなったです? 」


 ふっ、失礼なやつめ……


 「俺の使える魔法に加工の魔法があるんだ! それで偽造硬貨を作る!」


 100%犯罪だが、このままだと飢え死にだししょうがない。


 「でもシュレイドさんこの世界のお金の形知ってるです? 」


 そうだった。


 「お金の形を教えてくれ! 」


 「はぁ、そんな偽造できる程詳しく知らねーです。ワタシ元々魔界の住民なんですよ? 」


 呆れた調子のリィリィからセレーネに視線を移す。


 「使えねーな……セレーネは? 」


 「私お金の管理は従者にやらせておりましたので……」


 ……


 「そんなトコだと思ったよチクショウ! 」


 昼前の森の中で、三人の腹の鳴る音が虚しく響くだけだった。

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