5話 黒幕幼女、リィリィ!
リィリィの話はこうだ。
魔王ソウルテイカーに仕えていたリィリィは、魔王と勇者の戦いに居合わせた。
激しい戦いを見届けた末、勇者の腕と魔王スキルを持った後継者をこの世界に呼び寄せるという情報を得る。
そして様々な準備をしながら潜伏し、魔王戦で目を付けていたドラオスを言葉巧みに誘って俺の実力を測るためにけしかけたらしい。
「(まぁドラオスに倒される様なら死体から魔王スキルを回収するつもりですですたけどね……)」
「ん?なんか言ったか? 」
「い、いえナンモイッテナイデスですよー」
怪しい。まぁいいか、
そんな事より……
「リィリィが仕掛けたんなら俺の首に付いてる腕外せないか? 」
苦しくはないが、魔法を思う存分使いたいし、何より気持ちが悪かった。
「あー、はい。ちょいちょいちょーい! 」
リィリィが勇者の腕をつんつんとつつくと、拍子抜けするほどあっさりと勇者の腕は力を失いぼとっと力無く地面に落ちた。
リィリィはそれをひょいっと拾い上げ、赤い布をくるくると巻いて懐にしまった。
「よし、これからどうしますです? 」
辺りはもうすっかり日が落ちていた。今日は走り回ってばっかで疲れたし飯食って寝たいな……
「うーん、宿とかに泊まりてえな。二人とも金持ってる? 」
「ねーですわ! 」
「ないですですよ? 」
野宿が確定した。
2時間後……
俺達は寝床と食料を求めて夜の森に入った。
一切明かりがない不気味な夜の森だが、三人で駄弁りながら進むと意外と怖くないもんだな……
「あれはなんですの? 」
空を飛ぶデカい鳥みたいな魔物をセレーネが発見する。
「ここ夜の森ん中だぞ、目ぇ良いんだな」
「最近視力が良くなったんですの! 」
へぇ〜
「でかしたです! あれはビッククェークという過食部位の多い鳥系の魔物ですよー!」
そりゃいいや、
「よし! 俺に任せろ!」
言いながら魔法を放つ。
飛距離とスピードに特化した、炎を纏う槍を放つ最強の炎系魔法、ヴォルガニックスピアだ!
炎槍は夜闇を切り裂きながらビッククェークに迫り、そして命中した!
じゅっ
あ……
ヴォルカニックスピアのあまりの火力にビッククェークは当たった先から蒸発し、地面に落ちる頃には原型を留めない炭の塊になっていた。
「もー何やってんですかよ〜」
「クソボケ! バカバカですわ!」
横から二人にポカポカと殴られる。
「うう、ごめんね……」
夜飯は遠のく。
俺の魔王スキルは『存在するあらゆる魔法を最高レベルで使える、魔力無限』というものだが、
ここの『存在するあらゆる魔法』に魔法のランク(例えば初級火系魔法ファイヤーと上級火系魔法ヘルフレア)の違いによる分別がなく、火系魔法を使おうとすれば全て最上級のゴーズフレアになってしまうのだ。
とどのつまり加減が効かないのだ。
のだ、というか、今分かった。三羽目のビッククェークを消し炭にした今、分かった。
「あーそういや魔王サマが下級魔法使ってるトコ見たことねーですですねワタシ……」
テヘペロっとリィリィ。イラっとしたのでスネを蹴る。セレーネも同様にリィリィのスネを蹴る。
二人からスネを蹴られたリィリィは、「さーせん! マジさーせんですよ〜!」と喚いていた。
夜はまだ長い。
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