4話 シュレイド死す! 俺を売りやがったあの悪役令嬢に復讐する為ゾンビになって復活して気が付いたらネクロマンサーの女の子でハーレム出来てた件



 女が指さした方には廃材置き場があった。

 埃っぽいその場所はどこか暗く、雑に重ねられた廃材も相まって陰鬱としている。


 おそらくヤツは廃材の下に隠れているのだろう。


 「俺に小細工は通じねぇ! 」


 廃材の山をパンチで粉砕する。

 パンドラの箱を開けると災いが起こるなら、箱を壊して希望だけ取り出せばいいのだ。


 「うわああああああ」


 情け無い声を上げながらヤツが姿を表す。

 右腕を庇いながら後ずさる姿を見るに、勇者の聖剣の破片から作った擬似ナイフは効いている。


 「このままトドメを刺す! 」

 「く、来るなぁ! 」


 青い顔をして逃げるそいつの肩を掴み、押し倒す。


 「これで終わりだ! 」


 勇者の遺産を振りかぶる。これで本当に魔王との戦いも終わる———


 「ああ、終わりだな! 」

 「何をっ!? 」


 魔王の残骸は右腕をこちらに掲げた。そこにはボロ布でぐるぐるに巻きつけられた丸い———


 「魔力、測定———っ! 」


 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!




 爆風で辺りの廃材が舞い上がり、重いものから順にパラパラと落ちた。


 シュレイドはその全てが一通り落ちきるのを見守ると、燃える様に熱い右腕を支えに立ち上がり、見下ろす。


 そこにあるドラオスの姿は無惨だった。魔力測定の魔道具、水晶の破片が無数に突き刺さり、赤い血を流す。

 それに右腕を浸すと、右腕の熱さと血の温かさが溶けて混ざる様だった。


 上手くいったみたいだなと口の中だけで呟く。


 砂利を噛んだ時みたいに気持ちの悪い罪悪感に苛まれていると、辺りから沢山の足音が聞こえて、ゆっくりしている場合ではない事を思い出す。

 俺はその場を後にした。




 「その様子じゃ、作戦は成功したみたいですわね」


 街の外でセレーネと合流した。「ああ」と適当に答えた。


 「攻撃に関わる魔法を無力化されるなら、魔法を使わなければいい。俺は特大の魔力量で魔力測定器を爆発させられる、それでドラオスを倒す! ついでに水晶の点滅をボロ布で隠してたのも良かったですですよ〜」


 馬鹿にする様なニュアンスで数十分前の俺のモノマネをするピンク色の髪の幼女がいた。しかも浮いている。


 「誰だ! 」

 「誰ですの? 」


 「えっへへ〜見てましたよぉー、お二人の活躍。いえまぁ金髪のおねーさんの方は予定外なんですけどねぇ」


 「黒幕口調で喋る幼女だな、とりあえず名を名乗れよ」

 「ですわ! (便乗)」


 すると幼女は空中であぐらをかいて苦笑い。


 「これは失礼しました。ワタシ魔界序列12位……あっ今13位だった、の、リィリィと申しますです」


 ま、魔界序列13位!?

 ……凄いのかどうなのか微妙な順位だ。格ゲーのランキング666位の俺からしたら相当凄いが、……


「で、その魔界13位さんがなんで俺の作戦知ってんだよ」


 「ええそれは先程も言った通り見てましたから、今回の事件の一部始終」


 「あー、まずいな」

 「消した方がいいんじゃないですの? 」


 セレーネも状況のまずさを理解してるのが意外だ。


 そんな俺たちにリィリィは慌てて手を振ると、


 「まっ、話は最後まで聞いて欲しいのです! 」


 一理ある事を言う幼女だった。


 「含蓄のある言葉ですわね」


 「あのー、そろそろ話進めていいです? 」


 「皆さんが静かになるまで10分掛かりましたー」

 俺がそんな冗談を口にすると……


 「シュレイドさんの世界のあるあるネタはこの世界じゃ通じる人いないですよ」

 「あっはい」




 コホンと、わざとらしく可愛らしくあざとく咳払いしたリィリィはいいですですか? と話を始めた。


 「実はドラオスさんをシュレイドさんにけしかけたのはワタシです! 」

 「お嬢様チョーップ! 」

 「シュレイドキーック! 」 

 「ぐえ、ぐえ! 」


 幼女を大人二人で痛め付ける図。これはいけない。


 「だから、話を、聞けーーーです! 」

 「サーセン」

 「私は誤りませんわよ! 」


 「はぁ、じゃ続けますよ」


 いつのまにかリィリィは地面にしゃがみ込んでいた。


 「ワタシがドラオスさんをけしかけたのにはちゃんと理由があるんです! 」

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