【29時間目】魔王様、部活動のお時間です‼︎


「聞いたよ。逢魔君。キミは何やらこの世界の人間───ではなく、違う世界の人間だって?」


そう言うと私立黒瀬川学園生徒会長──黒瀬川 咲葉は自分の作業机から離れ僕らの方へと近付いてきた。

相変わらずすんげぇいい声と容姿に気を取られているといつのまにかおのれのパーソナルスペースにずかずかと入り込まれていることに気づく。

だけどまぁ、こんだけ美人な人なら領土侵犯もにっこり笑顔で迎えざる得ないものだ。


聖良がひじで僕の脇腹を小突こづいてくる。

いやだってさ、仕方ないじゃん?僕だって男の子だし……やっぱり美人には目が無くなっちゃうよ。


そんな僕らを見てくすりと笑うと生徒会長は返事を待たずに話を続けた。



「話はつねづねさくら子クラス委員から聞いている。それはそれは……私は全くもってキミの世界の事は知らないが気の毒であったね」



咲葉会長が僕のほほでる。

細い華奢きゃしゃな指をあごから頬、こめかみまで何らためらいも無くわせてくる。


そのちょっと性的えっちなアクションになんだか自然と僕の心臓は高鳴ってきてしまうのだけれども………。


あ、あれ?

この超絶美人生徒会長様々は本当は僕のこと好きなんじゃねぇかな………。


委員会委員会合の時の即興漫才そっきょうまんざいが気に入られたのかな……?

アドリブにしてはけっこーいいセンいってたと思うから………可能性としては、あり得る。


十二分に……ありえる………っ!!

ぎ出せっ………勝負の大海へっ……!!



「いや何カ○ジごっこしてんのよ……会長もイタズラはそこまでにして本題を話してください」



唐突に入った水原さんのツッコミに咲葉会長も「ふふ。そうだね。イタズラが過ぎたかな?」と軽く笑うと僕に這わせた指を離し、今度はつかつかと自分の作業机に向かった。

それに合わせ逸華会計・書記も一回、深いため息をくと自分の机の書類を整理し始めた。


副会長は………さっきと違ってちょっと薄着なのは気のせいかな?

今のうちに通報しとくのが吉かな……?



「さて、それでだ。私たち黒瀬川学園生徒会はキミたち"異世界の人間"のための新たな部活動を新設しようと考えている……!」



「「「……部活動?」」」



坂口さん、奈賀井さん、種田さんトリオが見事なハモリで疑問に思ったところで会長はにやりとすると話を続けた。



「あぁ、そうだ。"キミたち"専用の部活動だ……名前は……そうだな………"I・O・C団"と言ったところか?」



「あ、I・O・C団!?」



なんか字の並びと言葉の響き自体に既視感きしかんがあるんですけど……。

もしかしてその団体の会長トー◯スさんだったりします?

それとその字の並びはもうパクリっ!!

まごうことなきパクリっ!!



「ついでにそれ……何の略称なんですか?」



僕がおそるおそる(触れてはいけなさそうな)疑問を単純に会長に投げかけると答えは横から飛んできた。



「そりゃもちのろん!I(異世界を)・O(大いに盛り上げる)・C(ちゃん咲葉)の団体の略っしょ」



いやちょっと待って!?

完璧に略してる言葉は"あれ"だけどちゃん咲葉ってなに!?そこだけ無理やりすぎない!?


てか僕らのための団体なのに生徒会長の名前入っちゃうんだ!?

これもう完全にただの生徒会の下部組織だよね!?

あ、これもしかして僕らただのしたっぱ雑用係にされちゃうのかな!?されちゃうのかな!?



「なるほど……そいつはなかなか素晴らしいものだな……!!」



「私も設立に賛成だぞ!」



「あ〜〜うん。いいね。それ。私も賛成」



アウェー。

圧倒的アウェー。


彼女たちだけは僕の味方かと思っていたけどそんなことはなかったね。

まあ確かに僕ら出会って間もないけどさ、でもここまでくるまでいろんなことあったじゃん?

その中で、ほら、芽吹く友情とか、さ?


………無いってわけだ。

でも仕方ないか。だってもう30話突破して、かつ書いた文字数も10万字見えて来たところで実は未だに入学してから1ヶ月経ってないんだもん。


リアルの年月の方が早いってどういうことよ。

この物語終わりは来るの!?


とまあ、ちょっとメタ発言はおいといて……。

一つ、確かにしとかなければならないとこがある。



「それでその国際オリンピック委員会の活動内容はどんなものなんですか……?」



「それについては私から説明致します」とまたまた横から(今度は右)声が飛んできた。

逸華会計・書記は雑多に散らばる書類をごそごそ漁ると一枚の紙を手にかけたメガネを直しながら説明を始めた。



「え〜〜……異世界を大いに盛り上げるちゃん咲葉の団体、略称を"I・O・C団"とするこのクラブは主に生徒会員の多忙さを緩和かんわするためのクラブで活動内容としては生徒会の補佐ほさ及び生徒会に多量にくる依頼の解決、それに………」



「いややっぱり雑用じゃねぇか!!ほらね!!だから信用すべきじゃ無いんだよこういうデカイ組織の言うことなんて!!こうやって社会はどんどん悪い方向に向かっていくんだ!!絶望した!!こんな社会に絶望した!!」



刹那せつな、「まあ落ち着け」と生徒会長の手のひらが僕の口をふさいだどころで副会長の「続きをちゃーんと聞けって」という言葉が聞こえて来た。


一体全体なんだっていうんだ……。

僕は屈さない!!巨大組織の圧力プレッシャーなんかに……!!

ちゃんと断るんだ……お前たちの人形マリオネットにはならないと……!!Noと言える日本人(ではないけど)になるんだ……!!



「続けますね……。それに対して生徒会及び学園長の全目的な支援を行う。これが一応あらかじめ定めてあった決定内容らしいです」



「僕たち異世界メイベルの魔王である躑躅森 逢魔及びその従者である躑躅森 聖良はこの度、黒瀬川学園生徒会長黒瀬川 咲葉様のI・O・C団設立に賛同いたす事をここに示します。ひいてはこれからも今以上の友好関係が築けることを切に願うばかりです」



「ふっ……。物分かりの良いニンゲンは好きだよ。これからよろしくね。逢魔君とその御一行殿」



三度、聖良がひじで僕の脇腹を小突こづいてくる。


いやだってさ、仕方ないじゃん?

僕だって魔王だし……やっぱり友好関係には目が無くなっちゃうよ。



──4月初旬、春風が吹き抜けるこの生徒会室で僕ら縁がある7人はしくも同じ道を歩むことになった。


果たしてこれからどうなることやら……。



☆I・O・C団この度設立……!!──────



───────────────────────


【登場人物紹介】


●躑躅森 逢魔


魔王の息子で主人公。

社会の圧力には屈さない魔王の鑑。

この権力に真っ向から立ち向かっていく姿を小さい子には見習ってほしいと言う(前日談)。



●躑躅森 聖良


逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。

あんだけ辛辣なことを言っていてもなんだかんだ鼻の下を伸ばす主人様は放ってはおけない。

ちなみに彼女の脇腹つっつきは結構痛い。



●I・O・C団のみなさん(仮)


メンバーはもちろんこの方たち!

冬火!さくら子!風花!杏子!愉快なメンバーではあるが横の繋がりはとても強いぞ(大嘘)!!

これからよろしくね!!



●黒瀬川学園生徒会の皆様


生徒会長 黒瀬川 咲葉を筆頭にへんt……面白い副会長 二葉亭 密華と真面目な会計・書記 逸華からなる生徒会は毎日いろんな雑務に追われて大変だ!

え?なんでこの3人しか生徒会に居ないのかって?

それはこの先明かされるよ……!(未定)


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