第17話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その⑨

 戦艦長門の主砲が発射準備に入る。

 八門の16インチ砲が、一斉に笠山に照準を向けた。一方、笠山の虎が崎には超重戦車オイがその雄姿を現していた。


「こちらlager。長門級、距離25000メートル。まだ艦影は見えませんが、主砲を発射しました。4発。着弾迄40秒」

「副砲のビームマシンガンで砲弾を迎撃せよ」

「了解」


 155ミリの長大な主砲を装備している超重戦車オイ。主砲塔の前側に設置されている連装のビーム砲が断続的にビームを発射した。

 数秒の射撃で四発の砲弾は撃ち抜かれ、空中で爆発した。


「lagerたん。グッジョブです」

「ありがとうございます」

「目標上空に絶対防衛兵器アルマ・ガルムが進出しています。迂闊に攻撃しないよう注意して」

「わかりました」


 白銀の鎧に包まれた乙女のような容姿。その背には四枚の、黄金に輝く翼がはためいている。しかし、脚部は無い。

 萩市沖の日本海。笠山に向かって一直線に航行している長門級戦艦の直上に、突如絶対防衛兵器アルマ・ガルムが出現したのだ。


「椿様。お願いします」

「わかりまちた」


 戦艦の直上。搭載砲の死角になる位置。 

 そこから緩やかに降下していく絶対防衛兵器アルマ・ガルム。そして、手にした長剣を振り下ろす。そこから発せられた眩い光芒が長門型戦艦を包んでいく。その光に包まれた長門級戦艦は緩やかに上昇し、その艦体を完全に、空中にさらした。


「貴方は何故、萩市を攻撃しているのですか?」


 絶対防衛兵器アルマ・ガルムが長門級に語りかけている。


「貴方の名は長門。この萩の旧国名なのですよ。その栄光ある名を持つ貴方がこんな事をするなんて信じられません。貴方は萩を、日本を守るために生れて来たのではありませんか?」

「ワタシハ……私は……ビキニ環礁で沈んだ……はず……何故……このような場所に……」

「やはり、操られていたのですね」

「申し訳ありません。そのようです。しかし、この艦体は……まるで新造艦のような真新しい……海底で朽ち果ててしまったのに……」

「宇宙人が、ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人と名乗る宇宙人が改造したのです。そして、貴方を地球攻略のための先兵として派遣した」

「迷惑な話です。あのまま眠っていたかった……」

「お気持ちは分かります。しかし、艦体は再生された。この機会に、地球防衛の為、働かれませんか?」

「そう……ですね。わかりました。私の所属は?」

「萩市立地球防衛軍の指揮下に入っていただけますか」

「了解しました。新しい命を吹き込んでくれた、そして、活躍の場を与えてくれたゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人に感謝しなくてはいけませんね」

「ええ。そうですね」


 絶対防衛兵器アルマ・ガルムと長門の話し合いは終了した。長門はゆっくりと海面へと戻り、海上へその艦体を浮かべる。正蔵はというと、絶対防衛兵器アルマ・ガルムのコクピットで、二人のやり取りを眺めていたけだった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る