第16話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その⑧

 一方、ここは萩市。笠山にある地球防衛軍本部である。

 椿と正蔵は陸上自衛隊のヘリで帰還していた。三式戦車は自衛隊のトレーラーにて輸送中だった。


「椿様。よくお戻りいただきました。現在、謎の戦艦が日本海を進行中。ここ笠山を目指しています」

「はい。現状は認識していまちゅ。しかし、長門級戦艦を差し向けるとはどんな作戦なのでしょうか」

「わかりませんね」


 見た目が三歳児の椿とその眼前に立つ女性。彼女こそ萩市立地球防衛軍の、影の総司令ミサキ・ホルストだった。腹違いだがララの姉。某帝国の第三皇女である。肩で切りそろえている黒髪はストレート。地球で言えば東洋系の顔立ちだ。日本人として通用する容姿であるが、その豊満な胸元は日本人離れしている。


「自分達の技術力なら、沈没した戦艦でさえ新品同様に復活できると自慢したいのかもしれません。そして、四国方面での嫌がらせを潰したことに対し、憤慨しているのも事実でしょう」

「ララ隊長と二名のドールマスターを四国に引き付け、本部を狙ったのでちゅか?」

「そう考えるのが自然ですね」


 見た目が三歳児の椿はしきりに頷いている。

 その場にいるもう一人の青年は綾瀬正蔵。日本の経済を支えている大企業、綾瀬重工の御曹司である。絶対防衛兵器である椿がベタ惚れしている若者だ。


「あの、総司令。我々はどうするのですか。今から超重戦車オイで出撃ですか」

「そうですねぇ。オイ車は出撃しますが、AIコントロールとします。lagerたんに任せましょう」

「総司令。主砲重力子砲はAIコントロール下では使用できませんけど」

「そうですね」

主砲重力子砲を使用しなければ、あの戦艦を沈めることはできないと思いますが」

「沈める必要はありません」

「え? ではどうするんですか?」

「正蔵に任せます。椿様と一緒に、アレを分捕って来て」

「え? 鹵獲するのですか?」

「当然ですよ。鹵獲後は宇宙戦艦に改造します。ふふふ。宇宙戦艦ナガトはアンドロメダまで旅をするのよ」

「総司令……」


 ミサキの、荒唐無稽とも言うべき一言に、正蔵は唯々戸惑うばかりだった。

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