第15話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その⑦

 彩雲は桂浜公園内、坂本龍馬像の前に着陸した。同時に、彩雲のAIフォルカスが報告をしてきた。


「どうした。フォルカス」

「コウ少尉。防衛軍本部からです。萩市沖に大型の艦影が出現。全長225メートル。16インチ連装砲4基。長門型戦艦です」

「長門型戦艦だと? まさかそっちが本命なのか?」

「肯定。防衛軍の主戦力であるララ隊長とビアンカ中尉、コウ少尉の三名を高知に引き付け、無防備になった笠山の本部を襲う作戦だと推測します」


 黒猫はその情報を即刻ララに報告した。


「馬鹿な……」

「はい。信じられません。ビキニ環礁で沈んだはずの戦艦が復活しているなんて」

「問題はそこではない。沈んだ戦艦を復活させるのは手間と時間をかければ可能だ。それよりも、その行為自体が自殺行為だと言っている」

「それはどういう意味ですか?」

「沈没した戦艦など、海底の墓標としてそっとしておけば良いものを。死者の魂、艦娘の魂への冒涜だ」

「はい……」

「姉さまはそんな不遜な輩が大嫌いだ。墓穴を掘ったな。ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人は」

「なるほど。沈んだはずの長門を萩に向かわせる……こんな事をされれば、長州人でなくても日本人なら誰でも憤りを感じるでしょうね」

「そういう事だ。萩の本部は姉さまに任せておけ」

「了解。ところで隊長。縮退反応炉の方は?」

「もう少しかかる。ビアンカには上陸を阻止しろと伝えよ」

「了解しました。姐さんビアンカ中尉聞いてましたよね」

「ああ」

「よろしくどうぞ」

「何て貧乏くじなんだよ。イイ男は捕まんねえし、出撃すりゃこんなゲテモノ相手だし。どりゃああああ!」


 ビアンカのゼクローザスは水しぶきを上げながら恐竜型ロボへと走っていく。そして、その右足に長剣を叩きつけた。

 もちろん、この攻撃は本気ではなかった。

 鋼鉄人形は操縦士ドールマスターの霊力で駆動する決戦兵器だ。すなわち、操縦士ドールマスターの霊力に破壊力は比例する。上位の鋼鉄人形操縦士ドールマスターが操る鋼鉄人形の攻撃は、どんな防御も突き破ってしまう貫通力があるのだ。


 ビアンカの攻撃は手加減したものであったが、それでも恐竜型ロボの注意を引き付けた。その巨大な顎が開き、稲妻のようなビームが射出された。

 ビアンカは大きな盾でそれを防ぐ。盾により拡散されたエネルギーは周囲に迸る。周囲数百メートルに火災が発生した。灯台や竜馬記念館、桂浜水族館などの建物、松林などが燃え上がったのだ。

 

  

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