第14話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その⑥

 未確認物体は、宇宙船が変形した恐竜型ロボットだった。飛行速度は速く、彩雲は瞬く間に引き離された。


「目標は500ノット(時速926km)に増速。ついて行けません」

「ジャンプしろ」

「ジャンプ後は稼働時間が数分しかありませんが」

「かまわん。私が何とかする」

「了解」

「それからビアンカを呼べ。鋼鉄人形をむつみ基地のカタパルトで飛ばせ」

「了解」


 彩雲は虹色に輝き始め、そして瞬間移動した。


 高知県桂浜上空に眩い光芒が弾ける。そして朱色のティルトローター機、彩雲が実体化した。


 宇宙船が変形した恐竜型ロボットも桂浜を臨む土佐湾に着水した。津波のような高さ十メートルの高波が付近の海岸に押し寄せる。


「良い感じに停止した。歌舞坂、行くぞ」

「はい!」


 威勢よく返事をした歌舞坂だが、何故か尻込みし、もじもじしている。

 ララは彩雲の左胴体にあるスライドドアを開いて、歌舞坂を蹴飛ばした。


「うぎあああああ」


 歌舞坂の悲鳴があがる。ララは空中で歌舞坂の腕を掴んで、ひょいと彼を背負う。そして、浅瀬を歩き正に上陸しようとしている恐竜型ロボの背に着地した。


「ララ隊長。こちらです」


 恐竜型ロボの背には、既に翠が立っていた。そしてその装甲の一部を指さした。


「ここがロックキーです」

「わかった」


 ララはビーム剣を引き抜き、翠が示した部分に突き立てる。


「ロック解除されました。扉は手動で開きます」

「うぉりゃ!」


 ビーム剣を収納したララが取っ手を引くと扉が開く。そして、ララと歌舞坂、翠の三名が恐竜型ロボの内部へと進入した。


「もう! 毛深い女は嫌いだって! 失礼な男だわ!!」


 大声で愚痴をこぼしながら、弾道軌道をすっ飛んできた鋼鉄人形は銀色に輝くゼクローザスだった。それは盛大な水しぶきを上げ、桂浜の波打ち際に着地した。


「今日はお怒りモードです。機体は黒猫のゼクローザス。もうはらわた煮えくりかえってるんで、出力は10倍増しよ!」

姐さんビアンカ中尉。何で俺の機体に?」

「今回はヤバイ相手って話だからね。自分の愛機、壊したくないでしょ」

「俺の愛機は壊しても平気なんですか?」

「もちろんよ♡黒猫ちゃん。でやああああ!!」


 10メートル級の鋼鉄人形ゼクローザス。左手には大型の盾を構え、左手には長剣を握っていた。そして両肩に大型の火砲を担いでいる。その120ミリ砲が火を噴いた。

 超高速で飛翔するAPFSDS装弾筒付翼安定徹甲弾だが、恐竜型ロボの装甲はこれを容易く弾き返した。


「あららら。実弾兵器は弾くんだね。じゃあ、切り刻んじゃうわよ」

「姐さん。待ってください。今、そいつの中にララ隊長が侵入されています」

「えー。早く言ってよ。さっきの砲弾が貫いてたらヤバかったじゃん」

「姐さんが勝手に撃っちゃったんでしょ。現場の状況、ちょっとは把握してください」


 ゼクローザスは両肩の120ミリ砲をパージし、長剣を構える。


「で、私は何を? あいつの脚でも切り刻めばいいの?」

「姐さん待ってください。あの恐竜型ロボは縮退反応炉を搭載しています。下手に破壊すると反応炉が暴走してブラックホール化してしまうんです」

「あ。それで隊長は中に入って……」

「そうですよ。あ、不味い。こっちは燃料切れです。姐さん。後はよろしく」

「え? あたしゃどうしたらいいの?」

「桂浜の専守防衛をお願いします。では」

「あのデカブツを体当たりで止めろって? 黒猫の馬鹿!」


 ビアンカの悲痛な叫び声が上がった。

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