第11話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その③
激しい衝撃波に揺さぶられる彩雲だったが、黒猫は落ち着いていた。機体を緩やかに旋回させつつ機首のカウリングを開放する。そこから連装のフォトンレーザー砲が顔を出す。
「援護射撃開始しますか?」
「待て。様子見だ」
「了解」
湯薄は次々とマッスルポーズを決めつつ満面の笑顔を見せる。白い歯がきらりと光った。
湯薄は、ダブルバイセップス……両腕で力こぶを作る姿勢から、アブドミナルアンドサイ……両腕を頭の後ろへと回して腹筋と太ももの筋肉を強調する姿勢へとポーズを変更し、そして叫ぶ。
「もっこりソニイイイック!」
再び黄金色の全身タイツから凄まじい衝撃波が発せられ海面を叩く。あたりに立ち込めた大量の水蒸気と付近の海水を吹き飛ばし、再び暗緑色の未確認物体が水面に姿を現す。
そして湯薄は、ややひざを曲げて両腕を腹の前で組む。サイドチェストと呼ばれる胸の厚みを横から見せるポーズだ。それを左・右と見せた後、再びダブルバイセップス、両腕で力こぶを作る姿勢を見せ胸筋を三度ピクピクと痙攣させた。
「ちくびいいいいーむっ!」
再び湯薄が叫ぶ。
黄金色の全身タイツから黄金色のビームが発せられ、例の未確認物体に突き刺さる。
再び大規模な水蒸気爆発が発生する。今回、彩雲は高度を上げており、爆発の衝撃波からは逃れていた。
「凄まじい威力だな。しかし、海中の相手に通用しているのか」
「熱量の9割以上は海水が吸収してしまっていますが、相応のダメージを与えているはずです」
「しかし、何だあのポーズは?」
「ふふふ……あのポーズが重要なのです。マッスルパワー。すなわち、筋肉の膨張と痙攣が次元振動を発生させ、それを高熱のビームに変換しているのです。ちなみに、女性用は胸元の揺れをビームに変換します。この胸元の揺れとは、現実と意識との間にギャップを生み、そこから空間の歪みを発生させて重力波を引き出す効果です。本来貧乳である人がたわわな巨乳を揺らす……このギャップですね」
ゴキッ!
ララが歌舞坂の脛を蹴飛ばす。歌舞坂はその痛みに声すら出せずうずくまってしまう。
「何だか腹が立った」
ララは眉間に皺をよせ、ギリギリと歯ぎしりをしていた。
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