第10話 桂浜の決戦——巨大怪獣を撃破せよ! その②
ATR-003彩雲は、徳島阿波おどり空港から、一旦、紀伊水道上へ抜けそして南南西へと向かう。
快晴の、抜けるように青い空の中に朱色の機体がキラキラと輝いていた。その彩雲を、何かが猛スピードで追い越していく。黄金色の航跡を残しながら。
「あれは何だ?」
「来ましたね。あれこそが男性用
ララの質問に意気揚々と答える歌舞坂であった。
彩雲はティルトローター機なので、巡航速度は時速500キロメートルほどである。しかし、黄金色の全身タイツとでも言うべきTOVICを身に着けた湯薄圭は、彩雲の二倍以上の速度で飛行していた。
「速いな」
「ふふふ。理論上はマッハ5まで可能なのですが、現状はマッハ1(時速1244km)程度に抑えています。何分、このスーツを着ているのは生身の人間ですから」
生身で音速を出すのも危険であろうに、この歌舞坂という男は気が違っているのではないか。ララはそう思ったのだが、ここでは口をつぐんでいた。この馬鹿げたスーツの自慢話をされてはかなわないからだ。
「黒猫。目標は?」
「二時の方向、約12000メートルです。現在100ノットに増速してますね」
「すごい波だな」
「波高約5メートル。津波のようです」
「あの高波だけで沿岸地域に被害が出るぞ。報告しておけ」
「了解」
彩雲は水中を爆進している未確認物体を回り込みながら北上してく。黄金色の全身タイツを身に着けている湯薄圭は速度を落としつつ高度を下げていった。
「ララ隊長。湯薄に攻撃させてもよろしいですかな?」
「海上での戦闘になるが構わんのだな」
「ええ」
歌舞坂がにやりと笑う。そしてスマホを胸ポケットから取り出した。
「湯薄君。ララ隊長の許可を得たぞ。存分に戦いたまえ」
「了解」
湯薄はさらに高度を下げ、未確認物体の上空に陣取った。
「もっこりソニイィィィック!」
湯薄は両腕でグリグリと力こぶを作って叫ぶ。
黄金色の全身タイツから凄まじい衝撃波が発せられた。その衝撃波は未確認物体周囲の海水を一気に弾き飛ばし、その暗緑色の背を空気中にさらけ出した。
さらに湯薄は胸筋を三度、ビクンビクンと痙攣させてから叫ぶ。
「ちくびいいいいーむっ!」
黄金色の全身タイツから黄金色の眩い光線が発せられ、未確認物体へと吸い込まれていく。瞬間、凄まじい水蒸気爆発が起こり、彩雲は衝撃波に叩かれ激しく揺さぶられた。
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