閑話
私は社畜だった。任された仕事をこなそうと必死になって、どんどん仕事を溜め込んでいく。
「この書類よろしくね。」
「これ、わからないからやっておいて。」
「先輩、定時なので帰らせてもらいます。」
誰かに助けてもらおうとすら思えなくて……。
そして…そして……、あれ?私は…。
「た…す…け…て……。」
##
目が覚めた。時計を確認すると午前5時すぎ。昔の夢を見ていたような気がする。けど、はっきりと夢の内容が思い出せない。なにか大事なことだと思うのだが……。
私がこの世界に転生してから、1週間が経過した。毎日朝から夕方まで、薬草を集め、報酬をもらうせいかつをおくっている。貯金も少ないながらにたまってきている。
私はこの世界に来れて本当に良かったと思っている。
日本よりも命の価値は低いし、福利厚生はしっかりしていない。でも、自分のペースで自分のために働き、全てが自己責任で生活することができる。これがどれほど素晴らしいことか。ブラック企業に勤めている方々には、共感してもらえるだろう。
サービス残業、長時間労働は当たり前。理不尽な命令をいやとは言えない会社の体質。
慰労会と言いながらも、企画した上役は内輪で盛り上がり、平社員にはただの休日出勤と変わらない。
これが嫌で嫌でしょうがなく、耐えて頑張れは必ず報われると信じてきたが、私は結局報われなかった。
私の人生はなんだったのだろうと思い、なんでもっと早く改善しようと思わなかったのか。
そして私は死んで、ナリア神にこの世界に転生させてもらえることになった。
死んでからもう一度新しい人生を送ることができるって、すごいことだよね。未だに現実感がなくて、これは夢じゃないか。朝起きたら日本の私の部屋のベットの上にいるんじゃないか。そう思ってしまう。
もし夢だったとして。私は目が覚めた時にガッカリするだろうか。これから現実に立ち向かっていけるだろうか。
いや。幸せな夢。こんな生活をしたいと願って、日々頑張るのだと思う。理不尽な現実に耐えながらも、希望を持って生きること。 そう自分に言い聞かせていくのだと思う。
私は運良く2度目の人生を与えられて楽しく過ごすことができている。
でも本当なら、死んだら終わりだったはずなのだ。2度目なんて与えられることなく、ただ死んでいくだけ。
そんな人生は嫌だと思わない?
私は今あるものを大事にして生きていくことが大切だと気付かされた。
頑張って生きようと思えた。
私は一度目の人生に後悔が残っている。取りこぼしてきたものが多い。だから、私は一つ一つのことを大切にしながらこの世界を生きていく。
小さなものも取りこぼさないように。
「シルヴィア、準備はいい?」
「もちろん!いつでもいけるわよ。」
「なら、行きましょうか。」
「ええ。」
「た…す…け…て……。」
声が聞こえる。
「シルヴィア?何か言った?」
「いいえ、なんにも。なんて聞こえたの?」
「助けてって言ってた。空耳かな?最近頑張ってたから疲れてるのかも。」
「そう……。何かあったらあたしに言いなさいよ。」
#side?#
「た…す…け…て…。」
わたしは必死に助けを呼ぶ。しかし、喉が潰れていてうまく声が出せない。
コツ…コツ…。誰かが近づいてくる。
「誰かを呼んでも、絶対に聞こえませんよ。ここは誰にも見つけられない。あなたは大事な実験材料なのです。せいぜい死なないでくださいよ。ふふふふふ。」
それはどこかに行ってしまった。私は牢の中にいた。手足は鎖に繋がれ、糞尿は垂れ流し。衛生環境はすこぶる悪い。
わたしはなんでこんなとこにいるのだろうか。親の言いつけを破って、1人で外に遊びに行ったのが悪いのだろうか。
神さま、もう約束は破らないので許してください。家族の元に返してください。毎日のように願っている。
しかし、それは叶わない。
少女の声は誰にも届かなかい。日々、絶望を味わい彼女の生きる意欲はどんどんと失われていく。
少女は最後の力を振り絞って声を出そうとする。
「だ…れ…か…、た…す…け…て…。」
そして、少女の目の前は真っ暗になった。
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