第2話

 私が目を開けるとそこには白銀の羽を持つ、小さな鳥がいた。


 「きれいな羽ね」

 「そうでしょ!あたしの神々しい神気を帯びたはねなのよ!」

 「!?」


 今この鳥喋った!?


 「ねえ。」

 「なによ?」


 「うわっ!やっぱり喋ってる!」


 


 私は思わず大声をあげてしまった。すると、その声に反応したのか、草むらから猪のような生き物が現れた。

 姿形は猪とそっくりだけど、サイズがもう段違い。軽自動車くらいのサイズはあった。

 

 「なにあれ!デカすぎない!」

 「あれはアングリーボア。この世界に存在する魔物という生物よ。基本は害獣として討伐されるわ。」


 アングリーボアは害獣と言われ怒ったのかこちらに向かって突進してきた。

 

 「避けて!!」


 私は体がすくんで反応ができなかった。

どうしよう。せっかく転生したのに、もう終わってしまうのか……。


 「ちょっと!何もう諦めてんのよ!」


そう言いながら小鳥は庇うように、私の目の前に来た。でも、サイズが違いすぎて明らかに焼け石に水だということがわかる。


 「あなたは飛んで逃げれるでしょ!早く行きなさい!」

 

 あの小鳥だけなら、簡単に逃げれるだろう。


 「ふん。あんな小物にやられるあたしじゃないわよ。見てなさい、しおり!」


「早く逃げなさいって言って……。」



 あれ?私名前言ったっけ?

私が疑問に思っていると、小鳥はアングリーボアに向かっていった。


 『ファイアーアロー』


 無数の炎の矢が小鳥の周りに出現し、アングリーボアを襲う。全てがその体に突き刺さり、アングリーボアは力尽きて倒れた。

 

 「うわー、すごいわね……。」

「あたしにかかればこんなもの、アリと同じよ」

 「異世界の鳥は話せるし、魔法も使えるのね」


 私がそう感心していると、小鳥は少し機嫌が悪くなったようで、私の頭を軽くつついた。


 「痛っ!なにするのよ!」

 「私をただの鳥と一緒にしないでもらいたいわ。私は神獣よ。そこらへんのこっぱとは訳が違うわ。」

 「神獣?」


 神ってつくからには、特別な存在なのだろうが、この世界のことをきたばかりのことはあまり知らない。もしかしたら、この世界では神獣が大量発生しているかもしれない。

 そんなくだらないことを考えていると、小鳥は得意そうに言った。

 

 「神獣は神より力と使命を与えられしもの。この世界に十数体しかいない特別な存在よ。その力は絶大で、ただの人族や獣には敵う存在ではないわ。」

 「あたしもそんな特別な存在。神ナリアより力と使命を与えられているわ。」


 ふむふむ。やっぱり神って名のつくもの

は特別な存在なのね。でも、そこに疑問があるわ。


 「なんで特別な存在であるあなたは、私の前に現れたの?」

 「あたしは神ナリアより力と使命を与えられているわ。その使命は転生者である神部しおりのサポートをすることよ。」


 ナリアさまって私を転載させてくれた神様ね。転生した後のことも考えてくれていたのか。ほんとに感謝しなくちゃ。


 「分かったわ。ナリア様には感謝しなくちゃね。それであなたはどんなサポートをしてくれるの?」

 「チュートリアルがあるのだけど、あたしがちゃんと説明するわ。あと、あたしは基本あなたの行動に従うわ。普段は普通の使役獣として扱ってくれて構わないわよ。」



 アドバイザーみたいなものか。




 「理解したわ。それでチュートリアルって?」

 「ステータスの見方やスキルの使い方を説明するわ。さっそくだけど、ステータスの見方からせつめいするわね。」


 「多分この世界に来た時にステータス画面が開いたと思うけど、もう一回開いてもらえる?開くときは『ステータスオープン』と言えば出てくるわよ。」

 

『ステータスオープン』

 

 私が唱えると先ほど見たものと同じ画面が出てきた。


 神部 しおり(15)Lv3 人間

 

 HP 150/150 MP 50/50


 職業 テイマー


 称号 異世界人 神$し%も〒€


 固有スキル 使役Lv2 意思疎通Lv1

      

 

スキル 鑑定Lv1 身体能力強化

     魔法適正(火、水、土、風属性)

     アイテムボックス

     異世界言語翻訳

     獲得経験値アップ(New!)

     



 「これがあなたのステータスよ。」 

 「あれ?前見たのと少し変わってる。」

 「レベルアップしたからその分ステータスが上昇したのね。HPとMPはレベルが上がるごとに上昇するわ。HPが0になったら、死んじゃうから気をつけて。」


 これは重要な情報だ。この世界では寿命を全うしたい。


 「MPが切れた場合も何かあるの?」

 「MPが切れたら、気絶するわ。だからMP管理もしっかりね。次にスキルについて説明するわね。スキルには基本的にレベルが存在していて、そのスキルを使っていると一定の割合でレベルが上がるわ。スキルはこれを使いたいと思えば、自然と使えるようになるわ。まずは鑑定を使ってみましょう。あたしを鑑定してみて。」


 そう言われて私は『鑑定』と心の中で唱えた。



 白銀の小鳥 Lv1 (1) 雌

 

 種族 神獣


 HP 1500/1500 MP 3000/3000

 

 称号 神より使命を授けられしもの

 

 

 「HPとMPの高さが全然私と違うんですけど……。あと、スキル欄が表示されないんだけど、どういうことなの?」

  「Lv1だとそんなものよ。鑑定を使っていくにつれて、自然と見れるものも増えていくわ。あと、隠蔽すきるや偽装スキルを持っている人には鑑定しても、正確なステータスは出ないわね。」


 なるほど。ステータスを隠すスキルもあるのか。あまり鑑定を信じ切ってもダメってことかな。 

 

 「身体能力強化は一定の割合で筋力、瞬発力などの身体能力が向上するわ。魔法適正はその属性の魔法を使えるということよ。魔法はスクロールで覚えるのが普通ね。」


 なるほど、どちらも自分の身を守るのに必要なことだな。これはしっかりと練習しないといけない。


 「固有スキルは職業ごとに覚えられるスキルなどがメインね。あなたはテイマーだからテイムするための使役や使役獣とのコミュニケーションを取ることのできる意思疎通を覚えているわね。」

 「固有スキルって職業に関するスキルだけなの?」

 「基本はそうよ。でも稀にその人にしか扱うことのできない伝説級のスキルが現れることがあるらしいわ。」


 なるほど。伝説級のスキルか。でも私には縁がないかもね。


 


 

##

 





「そういえばあなたってちゃんとした名前はないの?白銀の小鳥ってそのままじゃない。」

 「テイムした動物や魔物はテイマー自身が名づけるのよ。あたしにもかっこいい名前をつけてちょうだい!」


 名前か……。私あんまり名付けのセンスないからな。銀色……、シルバー……!

よし、これにしよう!

 

 「あなたの名前が決まったわ!あなたは今日からシルヴィアよ」

 「シルヴィア…、とてもいい名前ね!」


 そう言うとシルヴィアは嬉しそうに私の周りをパタパタと飛んだ。


 「しおり。ある程度ステータスやスキルのことは理解できた?」

 「ええ。少し疑問が残っているけど、大丈夫よ。」

 「それじゃあ、日が暮れる前に近くの街へ移動しましょう。いきなり野宿は危険だわ。」

 「分かったわ。」



 そんなやりとりをし、1人と1羽は近くの街を目指して歩いて行くのだった……が、


 「って、あなた街がどこにあるか分かるの?」

 「あたしは神獣よ。なんでも知っているわ。街は街道に沿っていけば着くはずよ。」

 

 近くに街道はある。しかしどっちに行けばいいのだろう?


 「あたしの勘はこっちだって言ってるわ!しおり、行くわよ!」


 本当に大丈夫なのだろうか。そう考えつつもしおりはシルヴィアについていく。


 今度こそ1人と1羽は街に向かって歩き出すのだった。


 



##


 ここは神界。そこから先ほどまでの2人を眺めている者が1人いた。


 「無事転生できていてよかったわ。でもステータスにあんなものが出るなんて。彼女はあまり気にしていないみたいだけど。でも、あの子がいるから大丈夫かな。

 自分で望んで下界に降りた。しっかりと自分の使命を果たしなさい、神ナリア。いいえ、神獣シルヴィア。」


 そう言って、その者は去っていき誰もいなくなった。



 


 


  

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