【十二月九日】

今日は俺が初めて海に浸かった日。ついに二十四歳になったのだ。

「なあ、弓哉。俺、家哉兄さんより年上になっちゃった」

「そうだねー。おめでとう」

起床時間の少し前に、隣の布団でゴロゴロしている弓哉にのしかかりながら主張すればあっさりとした祝いの言葉が返ってきた。

「んー、ありがとう。和哉兄さんの歳超えた時も思ったけどなんか変な気分」

「前ちゃんの歳も超えたけど、それは?」

「前ちゃんは前ちゃんだし、特になにも思わないなー」

「あー、なんか分かる」

二人でケラケラと笑えば、お互いの振動が伝わってきてくすぐったい。

「あのさ、俺も久ちゃんの歳超えても多分なにも思わないと思う」

「そっかー。ゆげもおめでとう」

「え?なに?」

「就役したの今日でしょ?」

「……明後日だよ」

「……」

二十四回目の今日はなんだか切ない。

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