【十一月末頃】
寒風吹き付ける海の上を艦艇が行く。艦艇といっても華々しいおもちゃをたくさん積んだ護衛艦ではなく、地味だのなんだの言われる機雷艦艇なのだが……。小柄な者が多い機雷艦艇でも数集まればそれなりの迫力があるはずだ。それが見たくて、こっそりと甲板にでてみれば早速潮をもろにかぶってしまった。
「さっむいなー!」
「こらっ! 出てきたなら仕事しろ!!」
そして案の定、袖に金色の偉そうな物をつけている人間に見つかってしまった。
「えーー!」
「えー、じゃない! ほらさっさとしろ!!」
俺、一応神様なのにと毒づいたところで当たり前のように仕事は回ってくる。白群の海には程遠い冬の海を見る。たくさんの機雷艦艇がそれぞれ与えられた課題をこなしている。その中には【あわじ】の艦影もあった。きっと淡雪も艦内のどこかでこき使われていることだろう。そして、はたと思い当たる。
「あっ、俺今回で最後なんだ」
二十年以上前に初めてこの海で訓練をした時からこれからもずっと続く気がしていた。来年の今頃、この海に【掃海管制艇くめじま】は居ない。
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