【六月二十五日】
外洋に面した港で艇はよく揺れ、岸壁と擦れ合い外舷を傷つける。そして雨は容赦なく降り注ぎ甲板を叩き、水は中へと染み込んでいく。
「あー、ドック明けたばっかりなのに……」
俺は食堂の天井を眺めてため息をついた。はり巡らされたパイプについた雨の雫を布で拭き取りながら、憂鬱と向き合う。この三日間の一般公開は今日の夕方に終わる。そうすれば呉に帰り、外舷を直し、雨漏りの穴を塞ぎ、ペンキを塗る。勿論、俺ではなく乗員が。この海に生を受けてから二十三年、それが俺の当たり前だった。
「俺、愛されてるなあ」
残り九ヶ月と少し、繰り返しの日常の中に愛がある。
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