能力地検専門学校のLHR 桜先生の1

コミュニケーションにおいて初印象が重要だ、と何処かで聞いたことがある。この話をすべて鵜吞みするのであれば自己紹介はとても大切だということだ。この事を知ってから自己紹介の練習をしてきた。

ただあんなに入学式で動き回ってたら初印象最悪だよな。折角頑張って自己紹介の練習してたのに無駄になったかも。…そもそもこんな、入学式で校長先生の話を遮る仕事をしたのがこうなった元凶じゃん。そう考えるとさっきまで忘れてた校長先生への怒りが。

この高校は入学式の後生徒は自分たちの教室に行きこの高校で初めての休み時間。先生は職員会議。内容は入学式の態度が悪い生徒がいるならその生徒の情報を共有、配布プリントの最終確認などの大義名分のもと校長先生の説教する時間。この担当は教頭先生。この人がいるからこの高校が成り立っていると言っても過言じゃない。

入学式の会場だった体育館を出てから直ぐに職員室に行く。すれ違った二年生がねぎらってくれる。ほんとにこの高校の先生陣が個性強い人しかいないから生徒が私の胃を守ってくれてる。

職員室はこの学校だと一番上の5階にある。他の高校だと少ない構造。理由は下にあった方が有事の時に対応しやすいからだった気がする。ただこの高校は能力科ということで先生の半分以上が御伽症だから他の高校と比べて安全。その代わり安全性に比例したのかのように先生の頭のねじが外れてるけど。

これから顔を合わせるであろう先生たちの顔を思い浮かべると何故か急に足が重くなった気がする。3kgぐらい足が重くなった気がする。憂鬱な気分のまま足を進める。3階についたところでまるでフルマラソンをした後のような息切れが聞こえてきた。3階の階段の一番最初の段でへたり込んでいる小柄な中学生のような人。まるで下手なコスプレのように似合っていないスーツを着た人。この人は私の担当するクラスの隣のクラスの担任三条真理恵先生。教科は数学。この先生も御伽症だけどこの先生の話をしてたら職員会議に遅れてしまうのでまた今度。

この様子だと2階まで生徒に運んでもらって後2階だから上ろうとしたら途中で体力が尽きた、というところだろうなー。ここで見て見ぬふりしたら確実に三条先生遅れるから後味悪いかなー。頑張って運びますか。

「先生。職員室まで運ぶんでおんぶか抱っこどっちがいいですか?」

「…なかつ…がわせんせ…い。立、てない。」見ての通り三条先生は絶望的に体力がない。さて立てないのであれば抱っこしかないな。見た目通り軽い体を持ち上げ5階に行く。


少し疲れたな。要約職員室前までこれた。三条先生は時々ぴくぴく動くぐらいで体力が回復していないらしい。なので職員室の三条先生の席に三条先生を置いておくために職員室を開ける。

もう既ににぎやかだった。言葉を変えるとカオス。

職員室に入ると直ぐに教頭先生と校長先生の席がある。そこでは教頭先生と校長先生が小学年のようにつかみ合いをしていた。まあこれは見慣れた。こんな先生達でも教頭先生は勿論校長先生も地味に凄い先生であることはこの学校の職員全員がしっている。

周りの先生も特に気にしていない。なぜならこのぐらい日常茶飯事過ぎてこのぐらいのことでアタフタしていたら二日で胃が焼けてしまう。

少し奥に目を向けると入り口の近くにで女の体育の先生と男の社会全般の担当の先生2人がボディビルのポーズをしながら筋肉量を競っている。2年生の担当している先生が使っている机のところで国語の線の細い女の先生が生物の女の先生に解剖で使った生物もいいから食べられそうな生物がいたら譲ってもらう約束を取り付けようとしている。

一年生の担当先生が使っている席の方では学年主任の音楽の男の先生が何かの書類の上で寝ている。この環境で一年頑張るのか…


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