第5話 ここを、なぜ任されたかのハナシ

 ネイスを担ぎ、森を進む間。

 わたしは今更ながらにふと考える。

 なぜ、わたしが選ばれたのか?

 

 親っさん閻魔様はそう言っていた。

 わたしの全て生涯を知った上での発言なのだろう。

 確かにわたしは、

 だがそれは、わたしの親であり半身とも呼べる親っさん賀菊祐雅の目と耳が届く範囲だけの話だ。

 決してではない。

 はあるにしても、規模が段違いだ。

 それに、わたしがした変え方は、決してではない。

 親っさん家族を含め、守るべきものがあったから行使していたまでで、それを楽しんだことも誇ったこともない。親っさんを失い、年老いてからは恥じる事もあった。

 それを再びここで行えと?

 それならある意味、地獄での罰と変わりないかもしれない。

 しかし、親っさん閻魔様はただ、"何とかしてほしい"とだけ言った。

 言葉を濁した訳ではないように思えた。

 親っさん賀菊祐雅の姿をしていたからなおそう思える。

 親っさんは、わたしに頼み事をする際、決して抽象的な言葉は使わなかった。

 誰かを殺す必要があれば。

「殺してくれ」

 とはっきりと言ってくれた。

 罪を半分背負うつもりで。

 それが今回は、"何とかしてほしい"だった。

 勝手な解釈が許されるのなら、やり方は自由でわたしの好きにしていいのだろう。

 買われたのは、わたしの持つではなくの方。

 そう理解したところで、方法などはまだまだ分からない。

 今出来ているのも、ささやかな人助け程度だ。

 そういえば、ここまで直接的に誰かを助けることは無かったな。

 誰かの命を背負いながら、決して安全ではない道を進む。

 なるほど。

 それほど悪い気分でない。

 できることなら、こういうやり方だけを貫き通したいものだ。

 気づけば森を抜けていた。

 緩やかな凹凸ある草原の中を、一本の道が伸びている。

「これか」

 わたしは、街道の慣らされて硬くなった土を踏みしめると、太陽が沈み始めた方角西へと再び歩みを進めた。

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