2年生編 第102話
「じゃあお前は一体何が目的で余の前に現れたのだ」
「最後に章大の顔を見に来たんだよ」
最後?
「どういう意味だ」
「章大はもう未練は無いの?」
「何の未練だ」
「現世だよ。今も魔法少女たちは戦っているよ」
「余がやれる事は最大限にやってやったからあいつらが勝とうが負けようが関係ない」
それに魔法少女どもはもう精神が乱れようがちゃんと魔法が乱れないような特訓をしたのだからちゃんと戦えているはずだ。
勝つか負けるかは別にしてな。
「そんな事言って心配で気が気じゃないくせに」
「余の事を知らないくせに勝手な事を言うな」
「知ってるよ。だって、ずっと章大の中にいたからね」
「知ってるなら尚更余がどれだけあいつらに興味が無いかくらい分かるだろ」
余の中にいてそれも分からなかったとはこいつは本当に余の事を知らないな。
「いや、分かるよ。だって、章大の父さんだから」
むず痒い。
そうだったこいつ余の父親だったな、父親というのはこういうものなのだろうか。
まぁ確かにこのまま死んでいくのはメッカに負けた気がして気に入らないからな。
「分かった分かった。嘘ついて悪かったな、ほんの少しだけやる事を思い出してしまった」
「うん。素直で良い子だ」
「で、余に未練があったとしてお前は生き返らせてくれるのか?」
「うん、そうだよ」
そんなあっさりと言いやがって。
余の知識の中ではそんなとんでもない魔法を使える奴なんか聞いた事がない。
「お前ってもしかしてすごい奴なのか?」
「それほどでもないよ」
ムカつく言い方だな。
「そんな魔法どこで教わったのだ?」
「これは魔法って言うより愛だよ」
愛って…。
「愛が時にとてつもない魔法になる事だってあるんだよ」
そんなにも愛というのはすごいのか?
「この戦いが終わって香織に会いに行ったらこの魔法を使って」
そういうと余の父親は手から青い炎を出し、余を包み込む。
あったかい。
身体がじゃない、心が温かい。
「じゃあこれが僕が父親としてしてあげられる最後の事だよ」
「余の中にいるって事はまたいつでも会えるのではないのか?」
余の父親は静かに首を横に振る。
「もう僕はこれで消えるよ。もう3回も助けちゃったから」
「3回?」
「1回目は章大が赤ちゃんの時に、2回目は飛び降りようとした時、で、今回が3回目なんだよ。表に出て助けるのは3回が限界だからね」
「そうか…。最後だから言わせてもらうが、余はもっと普通に生まれたかった。両親がいる環境で学校に行って、帰ってきたら両親がいるような普通の子供が良かった」
「うん」
「だがまぁ、今は友達もいっぱい出来て、普通では味わえない事ばかり起きた。それが良い事だったり、悪い事だったりあったが、今は楽しく生きている」
「うん」
「だから〜、そのぉ〜、なんて言うのだろうな、あれだあれ、…生んだくれてありがとうな」
「うん。こっちこそ僕の子供でありがとう。いつでも僕は章大を見守ってるからね」
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