魔法少女の敵なんだが魔法少女に好意を寄せられて困ってる

2年生変 第93話

「あ、そういえばこの間お前の父親とスーパーで会ったのだが」

「ちょちょちょ、ちょっと待って！」

「…何だよ」

　せっかく空気が良くなかったから余から話題を切り出してやったと言うのに。

　それに何をそんなに焦っているのだ？

「さっき何て言ったの？」

　さっき？先程の話も聞くことが出来なかったのか？

「だから、この間お前の父親と」

「そこじゃなくて！もっと前！」

　もっと前？

　ん？余は何て言ったのだろうか。

「えー、何て言ったんだ？」

「だからお前と付き合っていればどうとかみたいなこと！」

「ああ、それの事か」

「それってどういう意味なの？」

「どういう意味と言われてもな、言葉の通りなのだがな」

　言葉の通りだからどう説明しようか。

「つまりあの時私が止めてなかったら私と付き合ってたって事？」

「ああそうだが？」

「何で？何で？どういう事？今私と宇野くんは付き合ってないってこと？」

　桜井莉緒は余にグイグイと距離を詰めてくる。

　ダメだこいつ、パニックになって変な事を言っている。

「一旦落ち着け」

　余は桜井莉緒を引き離す。

「何をそんなに慌てているのだ」

「慌てるに決まってるじゃん！だって宇野くんと付き合えてたかもしれないんだよ！」

　また桜井莉緒は余にグイグイと距離を詰めてくる。

「だから落ち着けって」

　余はまた桜井莉緒を引き離す。

「一旦深呼吸しろ」

「すぅーはぁーすぅーはぁーすぅーはぁー」

　桜井莉緒は余の言われた通り深呼吸をする。

「落ち着いたか？」

「はぁ〜ふぅ〜。うん」

「で、お前は何が聞きたいのだ？」

「まず、あの時止めなかったら付き合ってたのは本当？」

「ああ、本当だ」

「ごめんね。ちょっと待ってね」

「ああ」

　桜井莉緒はなぜか苦しそうにしている。

　桜井莉緒は呼吸を整えてまた余に質問していく。

「それは何でなの？」

「付き合うっていうのがどれだけ重要な事か余には分からないが、別に付き合っても良いかなと思ったからだ」

「それは何でなの？」

「別にお前の事が好きでは無かったし、そういう目でも見た事が無かった」

「うん」

「だが、お前の事を好きになる努力はしても良いなとは思ったのだ」

「そうなんだ」

「余は小さい頃親がいなかったし、友達もいなかった。だから誰かに好意を持たれるのは初めてだったのだ。それが余は嬉しかった…のかもしれないな」

　あれ？なぜ余はこんな恥ずかしい事を言わなくてはならないのだ？

　良いのか悪いのか分からないが余も変わろうとしているのだろうな。

「はい。じゃあ付き合ってください」

「？」

「あの時は止めてごめんね。でももうこれで付き合えるね」

「いや、付き合わないぞ」

「？」

「？じゃなくてだな、あの時とは状況が違うのだ。告白してきた奴はお前だけではないのだ」

「時を戻せれる魔法ってあるかな？」

「どうだろうな、あったら良いな」

「…はぁ」

　ため息やめろ。