2年生編 第90話

 いや、ここどこ?


 すごく田舎の方に来たんだけど、ここどこ?


 もう日も暮れてきて辺りが暗くなってるし、さらに寒くなってる。

 

 さっきまで走ってたから汗が出て体が冷えるのよ。


 本当にここどこ?動物は見かけるけど人はいないんだけど…。


 バス停ってどこにあったの?何も考えずに歩き過ぎたみたい。


 まぁとは言っても私には携帯があるからこんな状況どうとも無いんだけどね。


 今の時代迷子になってもネットが繋がっていたら全然迷子にならないのよね。


 つまり今の私は全然迷子じゃないんだよね。


 さてさて、今私はどこにいるのかな?


 ………。


 …充電が切れてる。


 

 嘘でしょ!?


 こんなことってある?普段私は充電を満タンにしておかないと気が済まないタイプの人間なのに。


 なのに何で今日に限って充電が無いのよ!


 そう言えば昨日の夜みんながコンセント挿してたから私は挿したかったけど、何か遠慮しちゃったのよね。


 凛ちゃんも挿す?って聞かれたけど平気なフリしちゃったのよね。


 何で昨日の私は平気なフリをしたのよ、昨日の自分を恨みたい。


 え、じゃあ私はここからどうやって帰れば良いの?


 バス停なし、駅なし、家なし、携帯の充電なし、人もいない。


 これってもしかしてだけど絶望的状況?


 もしかして私もう帰れないの?この訳の分からない所からもう帰れないの?


 いえ、まだ諦めるのは早いよ。


 私が自力で帰って行くのは難しいけど誰かが私を見つけに来てくれるはずよ。


 私がいないとみんな寂しがるからきっと血眼になって探しに来てくれるはずに決まっているわ。


 だからと言って私が何もしない訳にはいかないからとりあえず人がいそうな場所に行くことにしようかな。


 それにしてもここはどこなの?


 明かりもないし、動物の鳴き声だけが聞こえてくる。


 もしかして向かう方向間違えた?ずっと木しか見えないんだけど。


 




 ねぇ、いつまで歩けば良いの?もう足疲れたんだけど。


 ちょっと雨が降ってきて体が冷えてずっと体が震えてるんだけど。


 もう、嫌!


 何でこんなことになるのよ!


 痛っ!


 靴下を脱いでみたら踵の皮がめくれていた。


 靴擦れ…。


 せっかく新しい靴を履いてきたのに、こんな最悪なことになるなんてね。


 私はただ楽しく修学旅行を過ごしたかっただけなのよ。


 なのに何でこんな足が痛くなるまで歩かないといけないのよ!


 私は足の痛さもありその場にしゃがみ込んだ。


 もう最悪…。


「もう帰りたい」


「帰りたいならさっさと立て」


「……!」


 私は下げていた顔を上げる。


 目の前にはいるはずのない宇野が傘をさして立っていた。


「…誰?」


「誰って何だ。お前はこんな短い期間で余の顔を忘れたのか?」


「何でここに…」


「魔法少女どもがお前がいないって騒いでいたから探しに来てやったのだ。余も早く帰りたいのだ、さっさと立って歩け」


「立てない。手貸して」


「……」


 宇野は私を睨む。


「手貸して」


 私は諦めず手を出し続ける。


「はぁ〜」


 宇野は諦めて私を引っ張りあげる。


「じゃあ帰るぞ」


「足痛い。おんぶして」


「そんなもの我慢しろ」


「無理。痛すぎる」


「頑張れ」


「頑張れない」


「………はぁ〜、でっかい子供だなぁ」


 宇野は諦めて私に背を向けてしゃがんだ。


「よいしょ!」


「バカっ!勢いよく飛び込んでくるな!」


「じゃあレッツゴー!」


「お前が仕切るな!」


 まぁたまにはこんな事があっても良いかな。

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