2年生編 第87話

 宇野がなぜか私の家に行くと言った。


 宇野の事だから絶対に来ないと思ってたのに…、と言うか、最初は行かないって言ってたからね!


 私としては来てほしくは無いのよね。


 自分家見られるってすごい恥ずかしいの。


 無いけど私の部屋なんか見られたらもう生きていけないかも。


 それより何で宇野は家に来る気になったのよ。


「別に無理しなくて来なくて良いわよ」


 誘ったけどやっぱり来てほしくは無い。


「お前が誘ったのだろ。もう余は行くと決めたからな」


 いや、断りなさいよ。


「私の家すごい遠いのよ。だから、無理して来なくて良いわよ」


「まぁ余は電車より速いから何の問題は無いな」


 そうだった、こいつは運動能力がバケモノだから何の意味が無かった。


「お父さんとても怖いの」


「大丈夫だ。余の方が絶対に強いから」


 そうだ、こいつにこの脅しは効かないんだった。


「あんたの事だから絶対に来ないと思ってたわよ」


「本当は余も行きたくないのだが、お前の母親に言いたい事がいくつかあるからな」


「言いたい事?」


「あいつ余のバイト先に来るからな、来るなって言っておかないと」


「あんまり他人のお母さんをあいつって言わないでよ」


「良いんだよ。お前の母親はちょっとおかしいからな」


「だから他人のお母さんをおかしいとか言わないでよ」


 こいつだよ、おかしいのは。


 誰が他人のお母さんをおかしいとか平気で言えるのよ!


 しかもその娘の前で。


 やっぱり頭のネジぶっ飛んでるわよ。


「じゃあ、本当に来るの?」


「だから行くと言っているだろ」


「いつ来るの?」


「今日ってお前が言っただろ」


 くそっ、ちゃんと聞いてたか…。


 引き延ばそうとしたのに。


 いや、今日って言ったけど今日は来てほしく無かったな。


 まだ心の準備が全然出来てないのに。


「で、どうやって来るつもりなの?」


「お前ふざけるな。ちゃんとお前が連れていけよな」


「何であんたと一緒に帰らないといけないのよ!」


「当たり前だろ!余はお前の家を知らないから当然だろ!」


「そんなの知らないわよ。あんたならいけるでしょ」


「余を何だと思っているのだ!一緒に帰るくらい良いだろ」


「え〜。一緒に帰るの〜?」


「一緒に帰るくらい何とも無いだろ」


「じゃあ、私歩くの嫌だからあんたが連れて行ってよね」


「お前なぁ」


 もう怒りを通り越して呆れた表情をした。


「ああ、もう良いよ。もう言い合いする気にもならん。おんぶだろうが、抱っこだろうが文句言うなよ」


 本当は嫌なんだけどまぁ、タクシーで帰れると思えば悪く無いわね。

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