2年生編 第77話

 あれ?もしかしてあいつらの機嫌が悪いのは余が原因だったのか?


 こんなにもバスの中の雰囲気を悪くしてしまっている原因が余にあったのか?


 今思えばだが、機嫌が悪い奴って余に告白みたいなことをして来た奴しかいないではないか。


 こんな事くらいすぐに気づくこと出来ただろ!


 なぜ余はこんなにも簡単なことに気づかなかったのだ。


 だから余は鈍感野郎なのだ。


 あの空気が悪いのって余の取り合いで悪くなってしまったのか?


 余ってそんなにもモテる奴だったとはな。


 まさか修羅場になっていたとはな。


「もしかして菫にも告白された?」


 こいつは本当に勘の良い奴だよな。


「され…た」


 変な間が生まれてしまう。


「…オッケーしたの?」


「まだ返事はしていない」


「…情けない」


 そんな事言わないでくれよ、そんな事くらい自分がよく分かっているから。


「黙れ。余だって初めての経験だったのだ」


 小中学校の時は特に良い思い出が無かったからこんな事が起こるとは思わなかったのだ。


「葵もされたの?」


「あいつはちょっと違うが、それっぽい事はされたな」


 あいつのが正直言って1番困る事を言っていたのだ。


 余が誰にどう答えようとあいつは余について来てしまうからな。


「それっぽい事って?」


「聞かないでくれ」


 余は分かりやすく項垂れる。


「…分かった聞かないであげる」


 勘の良いお前ならきっと分かってくれるのだろう。


「悪いな」


「別に」


「てことは凛もそうなの?」


「あいつは違う。あいつはただのバカだ」


 あいつは本当にただのバカだ、ただただあの空気に困っていたな。


「バカって…、凛と宇野って本当に仲良しだね」


「どこがだ!」


「ほら、喧嘩するほどなんちゃらって」


「あんなバカと仲良いわけが無いだろ!」


「まぁまぁあんた達って似た者同士だから」


「あ、それだけは本当にやめてくれ」


 仲が良いのは周りから見たらそう見えてしまうかもしれないから仕方の無い事だが、似た者同士だけは本当に認めたくない。


 余があのバカの金髪に似ているなんて生きていけない。


「それにしてもお前は普通で助かったよ」


 こいつまで余に惚れていたら余はもう学校にいられなくなるぞ。


 こいつは余の事そんなに好いている訳では無さそうだから助かる。


「どういうこと?」


「いや、お前は大丈夫そうだから安心しただけだ」


「へぇ」


「何だよ」


「何もない」


「まぁ何でも良いが、あれはお前に任せたからな」


「何でよ!」


「この件は余はあまり関わりたくないからな。気まずい修学旅行を送ってくれ」


 別に余はあいつらと同じ班ではないから関係ない。


 それにあの件は今は考えたくないしな。


「じゃあ頑張ってくれよ!」


「ちょっと待って!」


 余は自分の席に帰る。




 悪い、高宮千沙。


 あと、金髪も。

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