2年生編 第70話

「え、ぇ、えぁ、え?…え」


 余はまた告白をされてしまったのか?


 桜井莉緒に続いて九重菫にも告白をされてしまったのか?


 あんなマジな告白をされたものだから思わず驚いてしまったではないか。


 にしても余の驚き方気持ちが悪いな、言葉が全く出ていないではないか。


「そ、それは余に向けて言ったのか?」


 もしかしたら余には見えない何かに言っている可能性も無くはないとも言い切れない。


 …無いな。


「はい。ちゃんと宇野さんに向けて言いました」


 ちゃんと余だった。


「間違えてないか?ちゃんと宇野章大に言ったか?」


「はい。宇野章大さんに言いました」

 

「そうか…」


 これは困った。


 今余は冷静を装ってはいるが、頭の中はぐちゃぐちゃになっている。


「どうします?付き合いますか?」


 ぐいっと九重菫は余の所へ近づく。


 今近づかれては冷静になれないから余は九重菫を突き離す。


 と言うか、こいつ今答えを求めているのか?


 そんなもの無理に決まっているだろ!こんな重要な選択を軽く選べる訳がない。


「ちょっと待ってくれ」


 余は今桜井莉緒も待たせているから、簡単には答えることは出来ない。


「さっきも言った通り余は桜井莉緒にも告白をされたのだ。だから、今答えを聞かれても答えることは出来ない」


 これが今余に出せる正解だ。


「それもそうですよね」


「悪かったな」


 これは仕方ない。


 今余の頭は正常では無いから正常な答えが出ないと思う。


 と言うか、桜井莉緒の時に答えを出しておけばこんなことにはならなかったのだ。


 あの時に答えを出していればこんな二股みたいなことは起こらなかったのだ。

 

 他人から見たら余は2人の女を侍らせている奴みたいになっているではないか。


 いや、違うからな、余はちゃんと2人のことを考えての結果がこれだからな。


 これは誰にも文句は言わせない。


 だが、待たせている2人は文句を言っても余は何も言えないがな。


「宇野さんは優しいのはみんな知ってますから」


「別に優しいとかそういうのではないのだ」


 ただ余にそんな勇気が無いだけだ。


「本当に悪かったな。こんな答えで」


「良いんです。そんな宇野さんも私は好きですから」


 またそういうことを言って余を困らせる。


「だけど、今だけは好きにして良いですか?」


「まぁ軽いことならばな」


 今の余は弱い立場にいるからある程度は言いなりになってやろう。


「帰るまでの間は手を繋いでください」


「今じゃないとダメなのか?」


「恋人気分になりたいんです。だってフラれることもあるんですよね?」


「あまりそんなこと言わないでくれ」


「フフッ。冗談ですよ」


「ほら」


「え?」


「別に手を繋ぐくらいやってやる」


「あ、ありがとうございます」


 




 いや、罪な男過ぎないか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る