2年生編 第66話

 あぁ〜!


 余は頭を乱暴にガシガシと掻く。


 なぜ余はあの時一緒に帰ることを了承してしまったのだ。


 流れに任せてしまったばかりにあの桜井莉緒と帰ることになってしまった。


 それにしてもなぜ桜井莉緒はあんなにも余裕なのだ。


 余があんなにも慌てふためていたというのに、余が余裕がないみたいではないか。


 余だぞ!この何でも完璧で何にでも冷静な余がだぞ!


 もう、情けない。


 たかが告白をされただけなのにこんなにも狼狽えてしまうとは。


 たった1人の子娘がこの余をこんなにもさすとは大した女だ。


 褒めている場合ではない、前も言ったがこれは待っている方が緊張するものだな。


 だからこの待っている時間が苦痛で仕方ない。


 別に授業を聞いているわけではないが、寝れるわけがないから仕方なく起きている。


 担任の教師が余が起きているのが珍しいと驚いている。


 …そんなことが放課後になるまでに起こったことだ。


 そして、とうとう放課後の時間が来てしまった。


 え〜これ本当に行かなくてはならないのか?


 まぁ余が良いと言ってしまったからこんなことになってしまったんだがな。


 足が重い。


 余の足に鉄球が付いているような感覚だ、これは逆に鍛えられて良いかもしれないな。


 これで余はまた強くなれるかもしれないな。



 …はい、現実逃避はやめにしておきます。


 恨んでやる、あの時了承した自分をぶん殴ってやりたい。


「悪い。待たせたな」


「全然待ってないよ」


 はぁ〜頑張るか。



 ***



「で、なぜ一緒に帰るのだ?」


 これが聞きたかったのだ、なぜこの空気が気まずいとは思わないのだ。


「どうしてだと思う?」


 余に聞くなよ!


 余は分からないからお前に聞いていると言うのに。


 あと、そのニヤニヤした顔をやめろよ、ムカつくな。


「余にはちょっと分からないところがあるな」


 緊張して変な言葉遣いになってしまったではないか。


「緊張してる?」


 何だよその余裕の表情は。


「へ、変なことを聞くな!余が緊張するわけがないだろ!」


「フフッ」


「笑うな!」


 ちっ、この余がバカにされるとはな。


「私はね、緊張してるよ」


「へ?」


「私は今すっごい緊張してるんだよ」


「そ、そうなのか」


 そうは見えないのだがな。


「だって好きな人と歩いてるんだもん」


 だからこいつは…。


「気づいてないかもしれないけど、実はずっと好きだったんだよ」


「だが、お前には好きな奴がいたのではないの

か?」


 そうだよ、こいつには好きな奴がいるではないか。


「宇野くんだよ。ずっと好きだったよ」


 余だったのか〜、だったら余は相当な鈍感野郎ではないか。


「そ、そうだったのか」


「そうだよ。もしかして気づかなかった?」


「ま、まぁちょっとは感じていたがな」


 



 これいつまで続くの?


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