2年生編 第32話

「何だよ、九重菫」


「何だよって、宇野さんを待ってたんですよ!」


 勘弁してくれよ、余はさっきまでクソ陰キャといてしんどかったというのに、次は九重菫?もう余はもたないぞ。


「別に待たなくても良かったのだぞ、帰ってくれても良かったのだぞ」


「何でそんな酷いことを言うんですか!たまには一緒に帰りましょうよ」


「別に余は1人で帰れるぞ」


「そうではなくて、一緒に帰りたかっただけです」

 

 なぜこいつは余と一緒に帰りたいのだ…、1人で帰れよ。


「部活はどうしたのだ?」


 こいつは演劇部に入っているからまだ部活をやっていないとおかしい。


 それか部活が早く終わってたまたま余を待っていたのかもしれないな。


「今日は部活がないんです」


「じゃあ帰れよ」


 余は1時間くらいクソ陰キャと学校に残っていたからこいつは1時間くらいここで待っていたのかもしれない。


 余が先に帰ってたらどうしてたんだよ。


「今日は宇野さんと帰るって決めてましたから」


「いや、さっさと帰れよ」


 じゃあ1時間くらいここで待ってたのかよ…、お前はもっと賢いと思っていたのだがな。


「はぁ〜歩きながら話すぞ」


 まぁ、1時間も待ったのだからその頑張りに免じて今日だけは一緒に帰ってやるとするか。


「はい!」


 何がそんなに嬉しいのだ。


「寂しかったんですよ、最近宇野さん構ってくれなかったじゃないですか」


「そうか?変わらない気がするが」


 定期的に構ってやっているのに何が寂しいだ、少しは我慢をしろ。


「いえ、やはりクラスが違いますから、そもそもの会う頻度が少ないんです」


「クラスが違うなら仕方ないだろ」


「私は納得していないです」


 何をそんな怒ることがあるのだ…。


「金髪がいたからなぁ」


 ボソッと聞こえるか聞こえないかの声で金髪のせいにする。


 あいつが2年生なってから余の学校生活を邪魔したせいで九重菫が面倒くさくなったではないか。


「金髪って誰のことですか?」


「ん?」


 小声のつもりだったが聞こえていたようだ。


 そうか金髪は余が勝手に呼んでいるだけだからな。


 だが、あいつの名前に名前ってあったか?


 ん〜



 あ!


 思い出した!


「凛だ!凛」


「大日向凛さんですか?」


「ああそうだ、凛だ」


 苗字大日向って言うのか。


 何とも言いにくい苗字だ。


「大日向さんがどうしたんですか?」


「凛が友達欲しいとかほざきやがったから手伝っただけだ」


 本当に大変だったからな。


「ちょっと待ってください!」


「?」


「何で下の名前で呼んでいるんですか?」


「え?」


「理由は?」


「呼びやすいから?」


「はぁ?」


「え」




 いや、怖っ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る