2年生編 第22話

 毎回思ってしまうが、こいつの名前凛って言うんだ。


 金髪って言い過ぎてこいつの名前もう忘れてしまった。


 話を戻すが、金髪の様子を見ている限りどうやら母親の存在に怯えているように見える。


 ただボランティアをしているだけなのだが、こいつにとっては都合が悪いのだろうか?


「もう一度聞くけど何しているの?」


「ちょ、ちょっと商店街のお手伝いをしてただけ」


 こいつ他の奴には偉そうにしている割には母親にはそうでもないな。


 このことを見るとこいつがこうなった原因は母親が関係しているかもしれないな。


「そんなことしなくても買って欲しい物があるなら言ってくれたら良かったじゃない」


「お金はもらってない」


「へ?」


「ボランティアしてるの」


「ボランティア?」


「色々体験してるの」


「だからそんな服が汚れているのね」


 ボランティアの内容によっては汚れ仕事だったりするからな、服が汚れるのは仕方ない。


「そんな危ないことさっさと辞めなさい」


「で、でもみんな良い人で」


「そんなこと良いから、もう帰るわよ!」


「ママ待って!私の話最後まで聞いて!」


 金髪の母親は金髪の手をとって、引っ張っていこうとするが、金髪は反発している。


 どうでも良いが、こいつ母親のことママって言っているのかよ。


「帰ってから聞くから!」


「待って!」


「早く行くわよ!」


 おい、あまり大声で喧嘩をしないでくれよ、目立ってしまうではないか。


「おい、その辺にしておけ」


 余はこの喧嘩があまりにも目立っていたせいで止める事になってしまった。


「誰あなた?凛の知り合い?あなたには関係のないことでしょ」


 こいつは何をそんなに怒っているのだ、余まで怒ること無いだうろに。


「こいつは余の弟子だ」


「弟子?」


「ああそうだ、だから最後まできっちり働いてもらわないと余が困る」


「あなたの意見なんか要らないわよ!」


「だったらこいつの意見は聞いてやれよ」


 こいつと言うのは金髪のことだ、まだこいつは最後まで母親に意見を言えていない。


「もちろん私と帰るわよね」


 金髪の母親は目でもちろん私の言うこと聞くよね、と訴えてかけている。


「う…、うん。私ママと一緒に」


「おい、本当にお前はそれで良いのか?」


「へ?」


「ここで諦めたら今までのことが無駄になるぞ、それに友達はもう良いのか?」


「………いわよ」


「は?聞こえないぞ」


「良いわけないわよ!」


 ちゃんと自分の意見言えるじゃねぇか。


「ごめんママ!私まだ頑張りたい!」


 金髪は掴まれていた腕を振り解いた。


「よく言った。逃げるぞ」


 余は金髪の手首を掴み、この場から逃げ出す。


「凛!待ちなさい!帰ってきなさい!」


 後ろで母親が怒っている声が聞こえる。



 ***



「どうしよう私お母さんに初めて反抗しちゃった」


 こいつ母親の前ではママって言っていたが、余の前ではお母さんって呼ぶのかよ。


「それにしては笑顔だな」


「何か悪いことした気分になっちゃって」


 こいつにとってこれが悪いことなのかよ。


「よし、これからもビシバシいくからな覚悟しておけよ」


「え、今までよりも?」


 こいつに友達が出来るまでもう少しなのかもしれないな。





 ピリッ



 …来たか。

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