2年生編 第10話
「ぐすっ」
いや、なぜこいつは泣いているのだ?
やべぇー、変なタイミングで起きてしまったぁ。
こいつプライド高いから泣いているところ見られたら絶対余に怒ってくるだろうから、また面倒くさいことが起こってしまうかもしれない。
というか、ここで泣くなよ!なぜ余が起きてしまうと思わなかったのだ、余がいることは分かっていただろう?なら、ここで泣くなよ。
ここは無難にまた寝てるふりをして、金髪が帰るのを待つか、一か八かでバレずに教室から出て行くか、どっちにしようか。
余が自分から声をかける?
するわけがないだろ!そもそもこいつは余の敵の魔法少女なのかもしれないのだぞ、そんな奴に余が自分から声をかけるわけがないだろ。
だから余はまた寝るか、バレずに教室を出るかの二択になる。
そして、余が選ぶ選択はもちろん、バレずに教室を出るに決まっている。
なぜ余がこいつに気を使ってまた寝るふりをしなくてはならないのだ、余は勇気を持ってこの教室から出て行く。
余は時々前世が忍者だと思うほどに忍び足が得意なのだ、余が本気で忍び足をしたら誰にもバレたことがないのだ。
ここで見せてやろう、余の中に眠っている忍者をな!
抜き足、差し足、忍び足。
抜き足、差し足、忍び足。
抜き足、差し足、忍び足。
抜き足、差しあ「誰?」
ちっ!
「何で宇野章大がいるのよ!」
はいはい、そうなると分かっていましたよ。
だって余は今日初めて忍び足をしたからな。
そもそも、こいつが寝ていたら可能性かあったかもしれないが、普通に起きていたからな。
「余は元々ここにいたのだ!そんなことも分からなかったのか」
「そんなこと私が気付くわけがないでしょ」
「そんなわけがあるか!余とお前の席は前後だろ!気付くに決まっているだろ!」
流石にその嘘は無理があるかもしれないが、こいつのことだからあり得るかもしれないのが怖い。
「そんなことより、…見た?」
多分こいつが泣いていたことだろう。
「何をだ?」
ここで泣いていることを触れてしまうと、プライドの高いこいつは何をしでかすか分からない。
「別に見てなかったら良いのよ。鈍臭いあんたが見てるわけないよね」
は?せっかくこっちが知らないふりをしてやろうと思っていたのに。
「ああ、見てない。お前が泣いているところなんてちょっとも見てない」
もう良い、余はこいつを許すことが出来ない。
「見てるじゃない!!忘れなさい!全部忘れなさい!生まれてきてからの記憶全部忘れなさい!!」
なぜ全ての記憶を忘れないといけないのだ。
「そんなこと知るか、お前が泣いていたことが悪いのだろ、この泣き虫が!」
「泣き虫じゃないわよ!今日初めて泣いたのよ!」
「はいはい、強い強い」
「バカにするんじゃないわよ!」
「はいはい」
「絶対に許さない」
「で、なぜ泣いていたのだ?」
これは単純に気になっていたから聞いてみた。
「なんであんたなんかに言わなくちゃいけないのよ」
「じゃあクラスの奴らにバラしてやろう。お前が誰もいない教室でメソメソ泣いていたって」
こいつはプライドが高いからな、こんなこと許すはずがない。
プライド高い奴にマウント取るの気持ちいい。
「は?最低!人間がやることじゃないわよ」
まぁ、余は人間じゃないからな。
「ほら、言えよ」
今余は最高に悪い顔をしているだろう。
「…からよ」
「は?」
「…かったからよ」
「聞こえないぞ」
「友達が出来なかったからよ!だから泣いてたのよ!」
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