第94話
「ねぇそこ代わってくれませんか?」
「いや!ここはわたしのばしょなの!」
「ちょっとだけで良いですから、ね?」
「いや!」
「だったら無理矢理にでも」
「やめとけ」
余はビシッと九重菫の頭にチョップをする。
「痛っ」
どうやら九重菫が今抱っこしているガキに場所を代わるようにケンカしているようだ。
お前らが勝手に話しているが、代えるかどうかは余が決まることであってお前らに決める権利ないからな。
というか、こんなちっちゃい奴とケンカなんかするなよ、お前何歳だよ。
「む〜」
「なんだよ」
「なんか美紀ちゃんに甘くないですか?」
「別に甘くなどない」
「嘘ですね、私にはそんなことしてくれないじゃないですか」
「当たり前だ!お前にするわけないだろ」
「ほら、私にはしてくれないじゃないですか」
「お前は何歳だよ!」
なぜ余が15〜16歳の奴を抱っこをしなければならないのだ。
九重菫、お前はもっと冷静で大人な奴だと思ったら全然子供ではないか。
ちゃんと桜井莉緒や高宮千沙やクラスの奴らには大人なのに余だけには急に子供になるからめんどくさい。
「ほら、あともう少しで商店街だぞ」
とりあえず話を逸らす。
クラス劇と同じでポスターを貼る場所は商店街だ。
クラス劇の時はすぐにポスターを貼ることが出来たから心配はいらないだろう。
「お、宇野じゃねぇか!」
「え?子供産んだのか?」
「おーい、みんな〜宇野が子供産んできたぞ〜」
「おい、やめろ。子供は産んでない!」
余はまだ学生で、しかも、このガキはもう5歳くらいだぞ。
商店街のジジイとババアどもが余に子供が出来たと言い回っているから止めるのに時間がかかってしまった。
***
「余たちはポスターを貼りにきたのだが良いか?」
「いいよ、どんどん貼っちゃって」
「宇野、こっちも貼っていいからなぁ」
「こっちも良いよ」
「こっちにも来てくれよ」
「いや、こっちに来てくれ!」
「そんなところより、俺のところに来てくれ」
「宇野くんはうちのところに来るのよ」
「全員行くからケンカをするな!」
全く、こいつらも子供みたいなことでケンカしやがって。
「余は手が空いてないからお前らは任せたぞ」
「「「はーい」」」
やっぱり仲が良いな。
魔法少女どもはそれぞれポスターを持って、貼りに行った。
「ねぇ」
余に抱っこされているガキが話しかけてきた。
「ん?どうした?」
「たんじょうび」
「は?」
「たんじょうび」
「誕生日がどうしたのだ」
「きょう、わたしのたんじょうび」
「だから?」
「プレゼントちょーだい!」
は?
プレゼントが欲しいだと?
なんて図々しいガキなんだ。
「こら!お兄さんを困らせないの!」
ガキの母親が叱る。
そうだ、もっと言ってやれ。
なぜ余がよく分からないガキの為なんかにわざわざプレゼントをあげなくてはいけないのだ。
「ん〜」
ガキは余の肩に頭を埋めて泣きそうになっていた。
「泣いてもダメだよ」
さらに母親がガキに叱る。
「お前は何歳になるのだ?」
ちょっと気になっていたから聞いてみた。
「ん」
ガキは手を開けて余に見せてきた。
ということは5歳になったということだな。
はぁ〜、もう仕方ないなぁ。
「おい、紙とペンはあるか?」
肉屋のおっさんにあるか聞いてみる。
「おお、あるぜ」
余は紙になんでもする券、と書いてガキに渡す。
「これで良いだろ」
「え?いいの?」
「一回だけだからな」
「わーい♪わーい♪」
ガキは余から降り、走り回って喜んでいる。
何がそんなに嬉しいんだか。
「すみません」
ガキの母親が謝ってくる。
「別に良い」
「私たちには無いの?」
ポスター貼りに行った魔法少女どもが帰ってきていた。
「あるわけないだろ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました
という作品も書いているのでぜひ見てください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます