第93話

「やっぱり離れろお前ら」


 今余はポスター貼りに来ているのだが、魔法少女どもが余に3方向で引っ付いているためめちゃくちゃ歩きにくい。


 右に九重菫、左に高宮千沙、後ろに桜井莉緒となっている。


「もう無理、頑張って」


「お前がなぜそんなに偉そうなのだ」


「ファイト」


「お前が一番邪魔なんだよ」


「宇野さんなら出来ますよ」


「お前も歩くこと出来るだろ」


 ただ歩くだけなのにこいつらのせいで負担がすごいのだ。


 こいつらはなぜか余に体重を預けているのが意味がわからない。


 こいつらは知らないが敵だからな余らは。


「もう分かったから、せめて人が多くなったら離れろよ」


 もう引っ付くのは諦めるから、こんなところを見られたら余の威厳がなくなってしまう。


「「「は〜い」」」


 仲良しかよ。


 余も丸くなってしまったな、昔の余だったら全員殴ってでも離れさそうとしていたからな。


 そう思うと一体余は成長しているのか、衰退しているのか分からなくなってきたな。


 成長していることを願っている。


「おにいちゃ〜〜〜ん」


 ドンッ


「お゛ぅ」


 前から小さい何かが余にぶつかってきた。


 勢いよくぶつかってきたから思わず吹いてしまった。


 余は誰よりも強いが急な攻撃には驚いてしまう。


「誰だお前」


 余の両腕は高宮千沙と九重菫に塞がれているため引き剥がすことが出来ず、顔を見ることが出来ない。


 だが、こいつ確かおにいちゃんって言ってたよな?


「あれ美紀ちゃん?」


 美紀?どこかで聞いたような気がするのだが、覚えていない。


「コラ!美紀。走って行ったら危ないでしょ」


 またこちらに走ってきたのはこいつの母親なのだろう。


 その母親にも見覚えがあるな…、どこで会ったのだ?


 

 あ!あのガキだ。


 確か、あの時もポスター貼りに行った時だったな。


 またこの展開かよ。


 というか、唯一残っていた前が塞がれてしまった。


 右に九重菫、左に高宮千沙、後ろに桜井莉緒だったのだが、前にあのガキがいる。


 3方向から4方向塞がれてしまった。


「おにいちゃんひさしぶり」


「分かったから離れろ」


「いや!」


 くっ、クソガキが。


「少しだけで良いから、な?」


「ぜったいにいや!おねえちゃんたちばっかりずるい!」


 こっちがちょっと下に出てやったのに断りやがって。


「おい、お前ら一旦離れろ」


 このガキを引き剥がすため魔法少女どもに離れるように言う。


「「「え〜〜」」」


「え〜〜、じゃねぇんだよ。これじゃ余が動けないだろ!」


 お前らは何歳だよ。


 魔法少女どもは渋々余から離れた。


「ごめんなさい、美紀が」


 ガキの母親から謝罪される。


「気にするな。ほら、お前も離れろ」


 余はガキに離れるように促した。


「やっぱりいや」


 話が違うではないか。


「ごめんなさい。でも美紀は普段わがまま言わない子なんです」


 なぜ余の言うことは聞かないのだ。


「抱っこ」


「は?」


「抱っこ!」


「なぜ余がお前を抱っこしなければならないのだ」


「抱っこして!」


「無理だ」


「ぐすっ…」


「泣いても無駄だぞ」


 抱っこって、お前何歳なんだよ。


 見た感じ5歳くらいなんだが、5歳って抱っこには大きいぞ。


 もういい加減諦めてくれよ。


 いや、ちょっと待てよ、こいつを抱っこすることによって魔法少女どもが離れるから良いのかもしれないな。


「今回だけだぞ」


「わーい♪」


 余はガキを抱きかかえる。


 まぁこいつらよりかは100倍マシだから良いか。


「じゃあ次は私たちもね」


「やるか!」







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 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

 

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