第86話

 はい、ということで余裕で二人三脚一位取ることが出来た。


 て、おい、どういうことだ。


 あいつら別れたのかよ、一週間くらいの間に何があったのだ。


 じゃああのデートは何の為だったのだ。


 あいつらが見せびらかすようにデート宣言をしたから余らもデートをしたというのに。


 あいつらだけがライバルだったのに…こんな形になってしまうなんてな。


 なぜ噂が流れてこなかったのだ、有名なカップルだったのだろう?余の耳に入ってきても良かったはずだ。


 いや、誰か普通に教えてくれよ、余がバカみたいではないか。


「あれ?そんなに喜んでないの?」


 お前もお前だよ、あいつらが別れたなら余に教えてくれても良かっただろう。


「お前は知っていたのか?」


「何が?」


 白々しいな。


「あの有名なカップルが別れていたことだ」


「知ってたけど」


「なぜ余に教えなかったのだ」


「何で教えないといけないのよ」


 あ、そうだった…こいつには二人三脚に勝ちたいからという理由だけで、デートと練習をさせていたのだった。


 デートの時にちゃんとあのカップルのことを話しておけば良かった。


「もうちょっと喜んでくれても良かったのに………」


 高宮千沙は今にも消えそうな声でボソボソと呟く。


 そうだよな、あのカップルがいなかったが、二人三脚一位取ったには変わりないからな、素直に喜ばないとな。


「そうだな、余たちは勝ったのだからな」


 余は高宮千沙を抱える。


「え?え、ちょっ」


「わーしょい、わーしょい、わーしょい」


 余は高宮千沙を5メートルくらい上に向かって放り投げ、胴上げをする。


 こいつは良く頑張ったからこれくらいしても文句はないだろう。


「な、な、何やってんの?ちょっ、高いって、降ろして!」


「そう言うなって」


「本当に!本当に!もうやめて」


「遠慮するなよ」


「違う違う違う!本当にやめて、みんなも見てて恥ずかしいし」


「みんなに見てもらえよ、余たちは二人三脚で勝ったのだから」


「私何か宇野にした?もう謝るから降ろして」


 何だよ、喜んでくれると思ったのだがな。


 余は高宮千沙を胴上げするのをやめ、降ろした。


「はぁはぁはぁ、みんなが見てるのにあんなことしないでよ」


 高宮千沙は膝に手を置きながら余に注意をする。


 意外と胴上げは投げられる方も結構疲れるらしいな。


「でも、嬉しかっただろ?」

 

「全然」


 照れやがって。


 ***


 余が出る種目はもう無いから暇ではあったが、知り合いが出ているのを観るのは悪くはない。


 今は昼休みになって皆は弁当を食べている。


 余は佐々木のところにいる。


 佐々木は余が拘束しているから昼ごはんを食べれていないから、少しの間拘束を解いて、昼ごはんを食わせる。


「おい、逃げるなよ」


「ああ」


 ダンッ


 拘束を解いた瞬間佐々木は逃げようとしたが一瞬で捕まえた。


「余から逃げられると思うなよ」


「お前何者だよ」


「余は余だ。ちなみに次逃げようとしたら覚悟しておけよ」


「分かったよ」


 佐々木は観念したようだ。


 余はビニール袋からおにぎりを取り出し、佐々木に渡す。


「アレルギーは無いか?」


「…無いよ」


 佐々木はおにぎりを目の前にしても食べようとしなかった。


「食えよ。お前はリレー走るのだから」


「いや、俺は走らないからな」


「なぜ走らないのだ?ヤンキーに何かされたのか?」


「………」


 佐々木は黙る。


「そんなやばい奴なのか?」


「……あいつは人間なんかじゃない」


「人間なんかじゃない?」


 おいおい、人間では無いってことはデスゴーンの仲間なのか?


 それだったら余をハーフにした奴に会えるかもしれないな。


 意外と戦いの日は近いかもしれないな。



 

 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

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