第71話

 結局余は花火を2回も観てしまった。


 やっぱり余の魔法の方が優れているているのに人間は簡単だな。


 これ戻る時も桜井莉緒を抱えて行かないとダメなのか?


 そら、余がここまで連れてきたのだから余が連れて戻るのが筋なのだろうが嫌になってきた。


 余はすぐに気分が変わるからな、置いて帰って行こうかな?


 いや、正直に言うと気分だけではない、あいつ抱えた時になぜかモジモジしやがるんだよ。


 いつも通りのあいつじゃなくなるから嫌なのだ。


 だが、さっきも言った通り余が連れてきたからな、あいつの帰る方法がない。


 あいつを置いて帰ると、次会う時なんて言われるかを考えると大人しく余が連れて戻った方が良いな。


「おい、帰るぞ。しっかり捕まっておけよ」


 余はもう一度、ここに連れて来た時のように桜井莉緒を抱える。


「お願いします」


 なぜ敬語なのだ。


 余は桜井莉緒を抱えながら走っているのだが、やはりモジモジしてやがる。


 こいつ普段は絶対にそんな態度をしないくせに。


 チラッ 


 チラッ


 チラッ


 そして、こっちをチラチラ見てきやがる。


 やめろよ、気まずい雰囲気を作るなよ。


 どれだけ気まずい雰囲気になろうが余は脚を止めずに走り抜けていく。


「着いたぞ。早く降りろ」


 桜井莉緒の家の前に着いた。


「はい」


 だからなぜ敬語なのだ。


「じゃあ余はもう帰るからな」


「ちょっと待って」


 桜井莉緒は余を止めようと余の服の裾を引っ張る。


「今日は本当にありがとう。宇野くんのおかげでたくさん良い思い出が出来たよ。これからもよろしくね」


「まぁ程々にな」


 そう言って余は振り返ることもせずに歩を進めた。


 ここで帰りたいところだったが、余にはまだやらないといけないことが残っていた。


 ***


「おい」


「おう、今回は分身の方じゃねぇんだな」


「当たり前だ」


「で、わざわざ俺様のところに来て、俺様に何の用があるんだ?」


 余が帰らなかった理由はデスゴーンに会うためである。


「お前の方こそ余に用があるのではないか?」

 

 人間を怪人化させたから帰っていくのかと思っていたがなぜかまだ地球に残っていた。


 どちらかと言うと余があいつに会いに来たわけではなくて、あいつが余を待っていたような感じだ。


 ほとんど一緒だが、余があいつにわざわざ会いたいと思わないからな。


「なぁお前はどっち側だ?」


「何の話だ」


「とぼけるなよ、お前は魔法少女の敵か?味方か?」


「余は魔法少女の敵だ」


「良かったぁ、じゃあ俺様と手を組まないか?」


 デスゴーンは不敵な笑みを浮かべて余に提案してくる。


「勘違いするな、余はお前の敵でもあるからな」


「…お前の目的は何なんだぁ」


「余はこの地球を征服する」


「俺様と一緒じゃないか、俺様と手を組めば地球なんか簡単に征服出来るぞ」


「王は一人で十分だ」


「だったらいつかはお前を殺さないといけないな」


「余は今でも良いんだぞ」


「いや、やめておこう。まだその時ではない」


 デスゴーンは余との会話を終わらせてさっさと帰ろうとする。


「お前のおかげで余は最強になったから、少しは感謝しているぞ」


 こいつのおかげでハーフになれたからな、復讐のチャンスをくれたわけだ。


 感情はこもっていない言葉だけの感謝を伝える。


「あ?何を勘違いしているんだ?お前なんか今初めて会ったんだぞ」


 は?


「じゃあな、次会ったら殺すからな」


 初めて?いや、あの時デスゴーンが余を怪人化しようとしたから余は今魔法を使えるようになったのだ。


 あの時絶対にデスゴーンに会っていたはずだ。


 あいつが忘れているだけなのか?


 いや、もしかすると…




 デスゴーンの他にも敵がいるのか?













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 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

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