第70話

 なぜこのタイミングでデスゴーンが近くにいるのだ。


 せっかく屋台で気分が出来上がっていたというのに。


 めんどくさいことをしてきやがる。


 さすがはデスゴーンだ。


 余は気づいて桜井莉緒はまだ気づいていないが、いずれ女神からの報告が来るだろう。


 まぁ今回は余の助けがなくても魔法少女だけでもどうにかなるだろう。


「え?…分かりました。今向かいます」


 どうやら今報告が来たようだ。


 報告された時一瞬迷いはあったが、地球の運命がかかっているから花火どころではないだろう。

 

「ごめんね、宇野くん。デスゴーンが現れたみたいだからちょっと行ってくるね。絶対に間に合わせるから」


「ああ、行ってこい」


 桜井莉緒はデスゴーンのせいで怪人化するであろう相手のところへ向かった。


 余は別に花火にも興味無いし、桜井莉緒と二人で花火を観るのも嫌だから謝る必要は無い。


 どうしようか、ここで大人しく興味も無い花火を観て待つのもアホらしいから帰ってしまうか?


 だが、花火が始まる前に怪人化したやつを倒してしまったら桜井莉緒に怒られてしまう。


 ということは帰れないってことだな、余は今から一人で花火を観なくてはならなくてしまった。


 勘弁してくれよ、もう帰らせてくれよ。


 ***


 ヒュ〜〜〜



 

 ドーーーンッ

 

 

 あーあ、始まった。


 結局桜井莉緒は間に合うことが出来なかった。


 魔法少女どもは花火大会を中止させたくないらしく花火から離れたところのかなり上空で戦っている。


 花火の音に紛れて怪人化と戦っている音がたまに聞こえてくる。


 あいつらが頑張っているから今花火を観れているのだな。


 そして、あいつらが頑張っているから余が地球を征服出来ない。


 少しは怠けろ。

 

 シーーーーーン


 

 そして、とうとう花火が終わった。


 途中から観れるものかと思ったより怪人化相手に手間取っているみたいだな。


 だが、今回のあいつらには合体技があるから負けはしないだろう。


 今回は流石に合体技を出すことが出来るだろう。


「あ、宇野くん…」


 桜井莉緒が多分怪人化との戦いから帰ってきた。


「勝ったのか?」


「うん…」


 怪人化との戦いに勝ったのに浮かない顔をしている。


「ごめんね、間に合わなくて」


 ごめんねって、余も一緒に花火を観たいと思っているみたいではないか。


「一緒に観たかった……」


 普段は母親ぶっているくせにこういうところは子供なんだな。


「おい」


 余は桜井莉緒を横にして抱え、腰の上と膝裏の部分を持ち上げる。


「ちゃんと捕まっておけよ。あと舌噛むなよ」


「え、え?え。え?」


 余は桜井莉緒を抱えながら全力で駆けていく。


 車が遅く感じるほどのスピードで走り抜ける。


 そして、目的地に着き、桜井莉緒を降ろす。


「ここどこなの?」


「隣の県」


「隣の県?!」


 そう、余は走って隣の県まで来たのだ。


「何で隣の県に来たの?」


「あともうすぐで分かる」


 そう言って余は上を見上げる。




 ヒュ〜〜〜



 

 ドーーーンッ



 夜の空いっぱいに花火が広がる。


「花火…。もしかしてこれを観るためにわざわざここまで連れてきてくれたの?」


「いや、たまたまだ」


「ふふっ、ありがとう」


「ふんっ」


 この夏休みはボランティアをやると決めていたからな。


 まぁ、夏休みが終わればこんなことは一生しないがな。


 今回は屋台で余の機嫌が良かったのもあったから奇跡的にこんなことをしてやった。


 それに



「…綺麗」


 頑張った奴が報われないなんてそんなことがあって良いはずがない。


 





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

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