第69話

 桜井莉緒に痛いところをつかれて一緒に花火大会を観に行くことになってしまった。


 なぜこうなってしまったのだ。


 桜井莉緒は魔法少女で魔法少女は余の敵なのに一体何を間違えたら一緒に花火大会を観に行くことになってしまうのだ。


 そもそも花火の何が良いのだ、空に火花が出るだけだろ?余の魔法の方がすごいに決まっているだろ。


 それなのに何を「きれいだー」とか、「すてき」とか、「たまやー」とかほざきやがる。


 いつかは花火より余の魔法の方が優れていることを証明してみせる。


 今はそんなことはどうだって良い、絶対にボランティアをやっていなかったら花火大会なぞ行かなかった。


 花火大会って大会って付いているから何かを競うのか?トーナメント表みたいなのがあるのか?


「あ!もう来てたんだね」


 そんなしょうもないことを考えていたら桜井莉緒が来てしまった。


 花火大会を観るためにわざわざ集合場所まで決めた。

 

「遅い、余を待たせるな」


「宇野くんが早すぎるんだよ、まだ5分前だよ」


「余は気分で動いているからな、早い時もあるし、遅い時もある。今回たまたまは早かった」


「気分で決まるってことは今日は楽しみで早く来ちゃったってこと?」


「そんなわけあるか、余が花火大会を楽しみしているわけがないだろ」


「はいはい」


 おい、何だよその分かってますよ、みたいな顔は、余は本当に楽しみではなかったからな。


「なぜこんな時間に集合させたのだ?花火があがる時間はまだ先なはずだろう?」


 花火があがる時間には1時間以上もある。


 その間こいつと二人で何をすると言うのだ。

 

「何って屋台を巡るに決まってるじゃん」


 屋台だと…。


「屋台ってあの焼きそばとか、たこ焼きとか、射的とか、りんご飴とか、色々売っているあれのことか?」


「そ、そうだよ」


 余の熱に若干引いている。


 が、そんなことはどうだって良い。


「お、お、おおお」


 テレビとか噂では聞いていたが本当に実在していたとはな。


 屋台の存在は前々から気にはなっていたのだ。


 それが今日行けるとはな。


「じゃあ行くか、今すぐ行くか」


「はいはい」


 余は出来るだけ早く行きたいから早歩きで移動する。


「で、場所はどこなのだ?」


「分からないのに先に進まないで」


 ***


「お、おおおお」


 余の目の前には数々の屋台が並んでいた。


 これが屋台…悪くはない。


「おい、早く行くぞ」


「ふふっ、はいはい」


 何がおかしいのだ?


 まぁ良い、余には屋台があるからな。


 さて、全ての屋台をコンプリートするか。


 まずは焼きそばからだ。


 うまー。紅生姜が美味い。


 次はたこ焼きだ。


 うまー。タコが無いやつもある。


 次は射的だ。


 全然倒れない、魔法を使ったら一発なんだが今回は勘弁しておいてやる。


 次はりんご飴だ。


 全然りんごの味がしねー。


 次は金魚すくいだ。


 金魚飼えないからやっぱやらねー。


 かなり屋台を回ったな、全部悪くはなかったな。


「もうそろそろ花火の時間だから移動しよっか」


「もうそんな時間か」


 屋台を回っている時は気づかなかったが、もうそんな時間が経っていたとはな。


「じゃあ行くか」


 ピリッ


 花火が見えるところに行こうとしたら余以外のマナを感じた。


 デスゴーンか。


 よりにもよって今かよ。

 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る