第6話 どえらいベッピンさん

暇でほとんど席が埋まっていない店の中

ワイは生き生きとしていた

4名掛けのテーブル席にどえらいベッピンさんがおる

約1時間前、3名でやってきた女性客の一人だ

女性除く全男性従業員の目の色が変わった気がした


一通りの料理を満喫し談笑している

笑顔もまた素敵である

そんな彼女に見とれ呆けていると

かなたん「ム―――ッ!」

大人気の某なんちゃらの刃のごとく声を上げ

後ろから蹴りを入れられた


店主「や、違うんや決して見とれてた訳じゃなくて…」

そんな言い訳はお見通しのようで

かなたん「ムー…」

悲しそうな顔でほっぺたを膨らますマイハニー

ちなみに元読モである※アルバイトのかなちゃんご参照(しつこい)


くぁいいんだからもう!

ジェラシーモードのかなたん

ワイはご機嫌を取るために

店主「明日の休みさ、TDL連れてってあげるー帰りはザンギ(銀座)で寿司でも食おうぜー」

するとパァっとかなたんの顔が明るくなって

かなたん「行く!行きたい!」

おお、ノってるねぇ~


すっかりご機嫌になった

単純だな扱いやすいぜ(ゲス顔)

店主「もう今日は上がっていいよ暇だし」

かなたん「え?もう?」

店主「明日に備えてゆっくり休んだらいいじゃん」

かなたん「うん!そうするー!」

ウキウキと踊り足で更衣室に向かう我が嫁(彼女


店主「くくく」

とゲス顔全開のワイ

かなたん「お疲れ様でしたー!」

そういって皆にあいさつし店を出るかなたん

店主「おつかれさーん(よしよし)」


さてと

そう言ってワイは更衣室の鏡の前で入念に髪型のチェックをする

イケてる、よしイケてる

そう自分に言い聞かせ

おっとマウスウォッシュもしとこう

とさらに入念に口臭ケアをする


名刺は武器である

読んで字のごとくだがビジネスにおいても

名刺とは大変重要なアイテムであり

自分のステイタスにもなる

ワイのように’代表取締役社長’と肩書のある名刺ならなおさら


ワイは2種類の名刺を持ち歩いている

ひとつはビジネス用で社用の電話番号しかないもの

そしてもうひとつは’アレ’用のプライベート携帯番号が

記載されているものだ

当然、ワイは後者の名刺を持ち

女性客の席へと向かう


店主「本日はありがとうございます!」

紳士的に慎重にふるまうワイ

どえらいベッピンさん「店長さんですか?素敵なお店ですねー」

と酒も入って上機嫌なのかどえらいベッピンさんは笑顔で答える

他2名の女性客「イケメン店長キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

何やら物凄い食い付きである

ちなみにブスであるのでその他と名付けよう


店主「そんなことないですよー」

ちょっと照れ笑いをかますワイ

その他「えー私はイケメンだと思うけどなー」

…お前が思ってもなんとも思わんわ

と心の中で悪態をつくワイ

お目当てはどえらいベッピンさんのみなのだ

ワイはどえらいベッピンさんの方を向き


店主「このお近くでお仕事ですか?」

どえらいベッピンさん「ええ、そうなんですよー○○って会社でー」

どえらいベッピンさん「上司がここおいしいからおススメって言われて」

いい上司を持ったな(ぐへへ)

店主「ありがとうございますーすごいじゃないですかーあの○○ですか!」

と相手の勤め先を褒めたたえるワイ


その他「でしょでしょー店長は経営者なのー?」

とブス二人が喰いつく

店主「ええ、そうなんですよ実は」

と気だるそうに答えるワイ

その他「若ーいのにすごーい!名刺下さいよー!!」

ほらきた、やはり名刺は武器である

女性は公平に弱い

ワイは3人に名刺を渡した

いい流れを作ったな

ブスながらGJだ

と全女性を敵に回しそうなことを考えながら


店主「飲みにでも行きましょうよ奢りますんで」

とどえらいベッピンさんに向かって言った

どえらいベッピンさんもまんざらでもなさそうに

こう言う


どえらいベッピンさん「回らないお寿司でもおごってもらっちゃおうかなー」

うむノリノリである

イケる(何が?

恋愛とは押し合いである

引くことも大事

今日はここまでで終わりだ

連絡を待つのみ


その翌日ー


日曜である

週に一度の休みでもあるこの日は疲れ切った体を

リフレッシュする日でもある

今日は何かの約束があったかような気がしたが

スマホを見て見慣れない着信番号に気づく

店主「おお!もしや昨日のどえらいベッピンさんか!」


ワイは小躍りしながら掛けなおす

「あー店長こんにちわー」

店主「さっそく連絡くれたんですねありがとうございます」

と上機嫌のワイ

「二人きりで会いたいですー」

おうまいがー

どえらいぺっぴんさんのくせに中々積極的じゃないの?おう?

と半分ヤ〇ザのような言葉を心にする

店主「ぜひお会いしましょう(キリッ)」

あ、てか3人に渡したんだけどまさかな

と思ったので確認することに


店主「窓際に一人で座ってた方(どえらいベッピンさん)ですよね?」

その他「えー違いますよー二人で座ってた奥の方ですよー」

………おまえかい

店主「………」

その他「え?どうしたんですかー?銀座の○○ってお寿司屋さん行きましょうよー」

店主「…まえ…みたいな…ブ…に銀座だと……!?」

その他「え?どうしたんですかー?」

店主「うっせーブス〇ね!」

とブチぎれて電話を切るワイ


店主「あー腹立つわせっかくの休みにクソックソッ!!」

半分以上泣きながらワイは放心する

店主「シンフォギアでも打つか…」

アキバまで車を飛ばし日曜だというのにパチン〇スするワイ

店主「うひょーVストック3個じゃー」

出玉は絶好調である、今日もいい日だ

6時間ほど出っ放しでうっきうっきのワイは帰ることにした

重要なことを忘れていることさえ気づかずに


……

家に戻るとそこには20歳にもならないであろう元読モが座り込んで泣いていた

店主「あ…」

かなたん「ムー…」

………

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