第5話 冷やし中華はじめました

夏です

暑いどす

あ、みなさんワイだす


ー冷やし中華はじめましたー

店の軒先にそんなPOPを張り付けたのは

2週間前になる

’冷やし中華’一度は誰もが食べたことがあろうこの料理

何料理やねんと思ったことはないかい?

ワイも飲食業界に身を置きながら

この謎の国籍料理を深く追求したことはなかった


2週間前ランチメニューの衣替えが始まった

冒頭でも話したが季節は夏である

アホな従業員とアホな経営者しかいないこの店では

40℃の猛暑の中で汗だくになりながらようやく気づく

鍋メニューいらんやろうと…


そして全スタッフの会議が始まった

端を切ったのはアルバイトスタッフのリ・ウェイン君だった

ウェイン「冷やし中華やりましょう!簡単!おいしい」

店主「おお、ええな」

ウェイン「ちゅごくが開発した冷やし中華!」

と息をまくウェイン君

そうか中華というくらいだから中華料理なのか

店主「よしやろう」

即決だった


店主「他に提案あるー?」

ワイは皆に聞く

するとか細い声が上がった

横山ウメさんである

御年93歳のご長寿だ

よぼよぼだがれっきとした

ホールスタッフのリーダーである

ウメ「店主、お蕎麦はどうかしら?」

店主「却下」

会議が終わった


ランチ営業を始めてから順調に売り上げを伸ばしていた

一番人気はカツ丼セット

どんぶり専門店顔負けの出汁の美味さが自慢の一品だ

もちろん他にもいろいろある

女性に人気のナポリタンやドリア

学生向けに大盛定食

カップル向けのパフェなど

ドリンクにはタピオカまである

何屋やねんと客に突っ込まれることもあるが

店主「居酒屋です」

そう答えれば万事解決

大変便利な言葉である


そして事件は起こった

とある日の事シフトに入っていた

ウェイン君が来ないのだ

しつこくワイは電話をかける

LINEも鳴らしまくる

こちとら時刻は昼の11時でぃ

鬼電してもかまわんだろう


ようやく電話口にウェイン君が出た

ウェイン「おはようございマス」

店主「おい、寝坊だぞ早く来い」

ウェイン「えー?とシフトはいてましたっけ?」

半分カタコトが余計に腹を立たせる

店主「や、入っとるから電話しとるんやろがい!」

とうとうワイはキレる

するとウェイン君は

こういった


ウェイン「辞めまーす」

辞めるんかーい…おーい…

ワイは怒りのあまりにスマホをぶん投げた

ガツン!と何かにあたったような気がしたら

ホールでウメさんが倒れていた

投げたスマホがスマッシュヒットしたようだ


後で確認したらシフト表が一日ずれていて

ウェイン君はシフトに入っていなかった

彼は正しかったのである


そしてワイは2名のスタッフを失ったーーー


てゆーかよ冷やし中華って

日本じゃね?やり始めたん…


翌日


ー冷やし中華おわりましたー


ワイはそっと店の軒先にPOPを張り付けた

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