第364話 メイドVSメイド
「ここがメイド喫茶なのね!!」
「ああ。日本一質が高いと有名なメイド喫茶だな」
俺達はメイド喫茶の前で店を見上げながら話す。
「あの人ロリコンなのかしら?」
「あのおっさん金で釣ったんだろうなぁ……」
周りを通る人達は俺達を見ながらヒソヒソと話しているが、もう国家権力を平和的な力で退けた俺に怖いものはない。
俺とリンネは日本においても完璧な夫婦ということになっているのだ。
勝手に言わせておけばいい。
「それは聞き捨てなりませんね」
しかし、放っておけない人物が俺達の後ろに急に現れた。
『うわぁっ!?』
『きゃっ!?』
俺達はその現れた人物に驚いて全員が声を上げる。探知に長けたカエデまで驚いている。
そんなことが出来る人物は限られている。
「い、一体どうしたんだよ、バレッタ?」
そうだ。俺達の後ろに突如として姿を現したのは俺達のメイド長のバレッタだ。
「パーフェクトメイドとしてメイド喫茶のメイドとは白黒つけなければなりません」
「いやいや、別にメイド喫茶のメイドは本物のメイドとは違うから。戦う必要はないでしょ。それにバレッタ達よりも有能なメイドなんているわけないでしょ」
「いつどこに私達以上のメイドが現れるかは誰にも分かりません。私たちはメイドと冠する者に負けるわけにはいかないのです」
どうやらバレッタの中でどうしても譲れないものがあるらしい。
「はぁ……とりあえず戦うのはなしだ。一緒に行けばいいだろう」
「分かりました」
俺は諦めてとりあえず一緒に連れていくことにした。
「おい、今急に人が現れなかったか?」
「ええ、いったい今までどこにいたのかしら?」
「ホントにいきなり現れたよな……?」
「まさか……幽霊?」
後ろでは何やら沢山の人達が呆然とした表情で何かを話していたが、もう気にならないので内容までは分からなかった。
『おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様♡』
俺達が店内に入ると、フリフリのミニスカートのメイド服を着た複数のメイドに扮した従業員に出迎えられる。
「本物じゃなーい♪」
リンネは店に入るなり、出迎えてくれたメイド達にテンションが上がりまくっていく。
「くっ」
リンネの様子を見てなぜかバレッタが悔しそうな表情になった。どこかのくっころ女戦士みたいな顔になってる。
どうかしたんだろうか。
「ご案内いたします♡」
俺達はその中のメイドの一人に席に案内された。
「こちら認定カードになります」
何やらご主人様、お嬢様認定カードと言うのを貰った。今はこんなモノがもらえるのか。
「わぁ!!これがお嬢様の証なのね!!」
リンネは目をキラキラさせながらカードを掲げている。
俺がギルドカードを貰った時を思い出すなぁ。あの時はようやく外に出たばかりで、右も左も分からなくて、リンネに助けてもらってばかりだったっけ。
俺はリンネの様子を見ながら懐かしさを感じた。
「うむ。なるほど、そういうシステムなのか」
『わぁーい!!』
カエデはカードを見ながらこの店の仕組みを理解し、子供たちは何かよく分からないけど、カードを貰って喜んでいた。
「くっ」
再びバレッタが表情を歪ませる。
俺達はその後でメニューや料金設定の説明を聞き、フルコースを頼む。
「おいしくなーれ。おいしくなーれ。萌え萌えキューンッ♡」
暫くして料理が運ばれてくると、伝説の呪文とともに料理の最後の仕上げが行われた。
「ふぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
その瞬間、リンネのテンションが天元突破して意味不明が言葉を叫んだ。
「こらこら、そろそろ落ち着けよ」
「これが落ち着いて居られますか!!伝説のメイド喫茶の魔法の呪文よ?これに興奮しないでいられるわけないでしょ!!」
俺が周りの迷惑も考えてリンネを落ち着かせようとするが、聞く耳を持たない。
「さ、さいですか……」
俺も初めてなのでそれなりに感動しているが、隣にとんでもないテンションの人間がいると自分は冷静になるってのはよくあることだよな。
仕方ないので、俺はインフィレーネで音だけ遮断することにした。これでこれ以上他の人達に迷惑をかけることもないだろう。
「くっ。なるほど、そういうことですか……」
バレッタはメイドさんたちの動きを観察しながら、リンネたちの反応を確認しては終始苦い表情を浮かべ続けていた。
「そういえば、ご主人様?」
「なんだ?」
メイド喫茶を堪能して会計を済ませた俺に今回担当してくれたメイドさんが話しかけてきた。
「そちらのお嬢様は私たちと似たような恰好をしていますが、他の所のメイドさんですか?」
「いや、正真正銘俺の家のメイドだよ」
「えぇ~!?ご主人様って本物のお金持ちの方だったんですか!?」
俺が質問に答えると、心底驚いた様子で返事をするメイドさん。
「まぁな」
「まさか本職の方がいらっしゃるなんて……コスプレかと思ってました。本職の方から見てどうでしたでしょうか?」
俺の答えに、メイドさんはバレッタに評価を求める。
「ふ、ふん。ただ分野が違うだけなんですからね!!」
「あっ。行っちゃいましたね……気を悪くされたんでしょうか」
なぜ、ここでツンデレ発動してるんだ……。
まぁ、普段自分がしないような仕事を見て感じる部分があったのだろう。
「いや、ちょっとメイドとして何か思う所があったんだろう。今日はありがとう。楽しめたよ」
「いえいえ、こちらこそ。それでは行ってらっしゃいませ。ご主人様、お嬢様」
申し訳なさそうなメイドさんを取りなすと、俺達はメイドさんに見送られながら店の外に出た。
「おい!?人が急に消えたぞ!?」
「いったいどこに行ったんだ!?」
「たった今までそこにいたはず!?」
俺達が店の外に出た途端、人々が驚愕していた。
「どうしたんだ?」
俺が気になって騒いでる男に尋ねた。
「あ、ああ。今そこにメイド服をきた女の人がいたんだが、突然消えてしまったんだ!!」
「あ、ああ、それは信じられないな」
「本当なんだ。俺はこの目で見た!!」
完全にバレッタの所業だった。
こうしてちょっとしたハプニングがありながらも、俺達は秋葉原を堪能するのであった。
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