第363話 不審者
「色々なお店があって迷っちゃうわねぇ!!」
リンネはキョロキョロと見回しながらウキウキと秋葉原の道を練り歩く。
「あの子、めっちゃ可愛くない?」
「その反対側の子も可愛いぞ?」
そんな声があちらこちらから聞こえてくる。
リンネたちは一応地球風の服を着せているのでファンタジー作品のコスプレイヤーではなく、普通の女の子にしか見えないはずだからな。
バレッタの見立ては間違いないのだ。
そしてそれらの男たち全員の共通認識が『で、なんでその間がおっさんがいるんだ?』という疑問である。
まぁそう思うよな……。
リンネとカエデはどう見ても女子高生か、どう頑張ったところで女子大生くらいが限界だろう。
その美少女または美女に挟まれているのが、こんな四十手前のおじさんでは変に思っても仕方がない。
「ちょっとケンゴ、一体どうしたのよ。元気ないじゃない」
俺が少し遠くを見ながら歩いていたら、リンネが俺の横に並んで腕を絡めてきた。
「いや、そんなことないぞ。ただ、少しこの世の無常を感じていただけだ」
「そう?ならいいんだけど」
リンネの質問に首を振ると、不思議そうに俺の顔を見る彼女。
まぁ周りからの視線を気にしたところで仕方がない。リンネは俺の嫁に違いないのだから。
俺は腕に感じるその柔らかさからそれを実感していた。
「あの~、すみません、ちょっとお話を聞かせてもらってもいいですか?」
そんな俺達に話しかけてきた人がいた。
水色のシャツと紺色のボトムスを身に纏い、頭には記章をあしらった帽子を被っている。そう、皆御存じお巡りさんである。
まさかこんな所で職務質問を受けることになろうとは……。
まぁこれだけ年の離れたように見える二人が腕を組んで歩いていたら、援交やパパ活とかと勘違いされることもあるだろう。
「えっと、なんですかね?」
俺は仕方ないので、立ち止まって警察官の方を向く。こっちでは流石に敬語を使うのがデフォルトなので思わず敬語が出てしまう。
「あの、大変失礼かと思いますけど、お二人はどういうご関係ですか?」
「夫婦ですけど……」
本当に失礼なので、俺は正直に答えた。
「はぁ!?」
そしたら、目の前の警察官がそれはもうとんでもなく激しいリアクションで驚く。
「しょ、証明する何かってありますか?」
「そう言われてもこれくらいしかありませんけど……」
俺とリンネはバレッタの完璧な力によってこちらの戸籍などを用意してくれていたので、俺はリンネにも視線で促しながら、俺達はパスポートを提示した。
そこには俺達が同じ苗字であることが記されている。
「こ、これは大変失礼しました!!ちなみにそちらの皆様は?」
「彼らは、私の妻の姉妹たちですね。私は普段別の国で生活しているのですが、この度日本に用があって久しぶりに戻って来まして。妻の姉妹たちも一度行ってみたいというので連れてきたんです。今はその観光の案内をしているんですよ」
「そ、そうなんですね。わかりました。ご協力有難うございました」
警察官は、俺たちが用意した身分証明書と言い分をアッサリと信じ、俺たちを申し訳なさそうにしながら職質から解放してくれた。
「おいおい、あの二人夫婦らしいぞ?」
「マジで信じらんねぇ」
「一体どうやったらあんなに若くて綺麗な奥さんもらえるんだよ」
俺が警察に職質されてやっぱりなと思っていたようだが、予想外の関係性に野次馬達も信じられないと言った顔だ。
こっちでリンネの年齢を言ったところで信じられないだろうしな。
「ふぅ。流石バレッタの完璧な偽装だったな」
「えぇそうね」
とにかく切り抜けられたので俺達は安堵する。
「とりあえず、何処に行きたいんだ?」
「そうね、とりあえず地球のアニメや漫画が売ってるお店に行きたいわ」
「分かった」
俺達はその後、リンネの行きたい場所。
日本のアニメ系のグッズを沢山取り揃えている『タイガーホール』や、今では一般的に販売されていないような漫画まで扱う『コミックだらけ』。そして、日本の昔から現在までのゲームを網羅する『三千世界』。
などの店を回った。
「こっちの世界の魔法少女物のアニメが沢山あってよかったわぁ……」
「うむ。私も日本の忍者がこうも忍んでいないとは思わなかった。非常に興味深い」
リンネとカエデは各々自身が興味を持った作品を思い浮かべながら、ほくほく顔を浮かべている。
「これ面白ーい!!」
「可愛い」
「これなんて変形するんだよ!!」
「この肉クッション最高だぜ!!」
一方で子供たちはフィギュアや人形などをゲットして嬉しそうにしている。
どうやら皆満足できたらしい。楽しめたようで何よりだ。俺としても実際秋葉原に来たのは初めてだったけど、物凄く楽しむことが出来た。
後は最後にあの店に行けばもう思い残すことはないだろう。
「よーし、最後にメイド喫茶に行って終わりしようぜ」
「あぁ~、それいいわね!!一度行ってみたかったの」
「そうか、そろそろ腹も減ってきた頃だろうし、ちょうどいいだろう」
俺達はこの秋葉原で一番人気の高いメイド喫茶へと足を向けた。
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