第362話 どこの世界にも愚か者はいる
腹ごしらえが終わった俺達。
ついでに買取屋に行って、宝石や貴金属で作ったアクセサリーを少しだけ売ってこっちのお金を作っておいたが、とんでもない金額になったのは内緒だ。
バレッタに確認しながら換金したのでボったくられないように立ち回ったので、金額は満足のいく金額になった。
「よし、それじゃあ秋葉原に行くか」
「やったぁ!!」
早速リンネの要望通り秋葉原に行くことを告げると、彼女が嬉しさを爆発させ、見た目通りの年齢である十代後半の女の子のような反応をする。
俺としては可愛くていいんだが、これで同い年なのだからホントにファンタジーだ。
ただ、秋葉原を堪能するのに、一日で済むかどうかは分からない。もしそうなったら、一度全員の行きたい場所に行った後で、俺だけリンネに付き合おう。その時は各々自由行動してもらえばいい。勿論子供たちには保護者付きだが。
俺たちには特に時間制限があるわけでもないので、何日も掛けて色んな場所を堪能してから異世界に戻るつもりだ。
その間必ず俺と一緒に行動しなければいけないという訳でもない。保護者としてこっちの事も完全に理解している見た目人間にしか見えないアンドロイドメイドを付けておけば問題ないだろう。
その間に残るか異世界に戻るのかを決めてもらえればいい。日本だけでも相当な日数掛かりそうだから、もし世界中に行きたいとなると、さらに時間がかかるな……。
まぁその時はその時か。
「ひとまず電車に乗るか」
「電車……楽しみね」
彼女たちはまだ電車に乗っていない。ここまでは転移で来てしまったからな。そういう楽しみも端折らないように気を付けよう。
どうにも俺の感覚だと移動時間なんてない方がいいと思いがちだからな。
俺達は早速駅に向かって歩いた。
「へぇ~、これが駅なのね……」
リンネは駅に辿り着くなり、建物を見上げて感動していた。
「この辺りは小さい方だけどな」
「でも、こっちの建物はどれも大きいわよね。なかなか信じがたいわ」
秋葉原とかに比べると焼肉屋の近くはそれ程大きくはない。
俺の言葉に、リンネは駅の周りに建ち並ぶビル群を見回しながら述べる。
「こっちの人間からすればこれが普通だがな」
「あっちには大きな人工の建物は少ないからね。自然を利用した建物ならドワーフの城があるけど、後は城とエルフの国境の要塞などが挙げられるくらいじゃないかしら。世界中合わせても百くらいで済むくらいだと思うわ」
「そうだな。その代り、その一つがこっちよりもデカかったけどな」
俺にはこっちの風景はおなじみだがリンネにはそうではないように、俺も異世界の建物は憧れ通りで滅茶苦茶かんどうしたっけな。
あっちの建物は基本的には大きくないが、大きいものはとんでもなく大きくて、両極端と言った感じだ。
「それじゃあ、そろそろ電車に乗ろう」
「そうね」
俺達はをICカード乗車券のZuicaを購入してそれぞれに上限金額までチャージをしてから全員に無くさないように首に下げられるようにして渡した。
特に子供たちは無くしたりしそうだからな。そうならないように魔法も掛けたので問題はないんだが、一応念のためだ。
「あぁ~!!電車来た!!来たわ!!」
「なんと面妖な形をした乗り物なのだ!!」
「面白ーい!!」
「変な形~!!」
「箱が動いてるよ~!!」
「面白いが、肉じゃない、フンッ」
皆が電車がホームに入ってくるなり、はしゃぎだす。
流石に一人や二人ならまだしも六人が、しかも日本人じゃない雰囲気と容姿をもつ人間だと滅茶苦茶目立つので興奮が収まるまでは認識阻害の魔法で、彼女たちの存在を隠しつつ、自然とその部分を避けるようにした。
テンションアゲアゲ状態の彼女たちを無理矢理電車に乗せて、一角に集まる。
昼過ぎと言うことでそこまで混んでいないため、不自然に人がいない空間が出来る、ということもなく、俺達はなんとか秋葉原に着くことが出来た。
「電車面白かったわね」
「うむ。沢山の人間が乗り足り降りたりするのは不思議だった」
「そうね。……そ・れ・よ・り・も!!とうとう夢の秋葉原に着いたわ!!」
駅から出るまでは電車の話をしていたリンネとカエデだが、外の秋葉原の風景を見るなり、リンネは目をキラキラさせてその街並みを見上げる。
「はぁ~い、彼女たち、お茶しなぁ~い?」
「そうそう。秋葉原には初めて来たみたいだし、俺達が案内するよ」
興奮して秋葉原を見つめるリンネとカエデの許にチャラい男たちが数人ヘラヘラした笑みを浮かべてやってきた。
もういいかと魔法を解除したのが間違っていたか……。
リンネめっちゃ可愛いしな。
カエデもキリリとした美人だ。
二人がいたら声をかけてしまう男もいるだろう。
「うるさいわね。邪魔しないでくれる?」
「ふむ。お前たちに興味などない。去れ」
しかし、二人は全く相手にせず、再び秋葉原の街並みを堪能し始める。
「このくっそアマァ」
「ちょっと顔がいいからってふざけてんじゃねぇぞ?」
「ボコっておもちゃとして飼ってやるぜ」
「ヒィヒィ言わせてやる」
それが鼻についたらしく、四人は暴言を吐いて襲いかかった。
こんな真っ昼間の東京のど真ん中でそんなことを言ったらダメだろうに。
ーバキッ
「はいはい、ストップストップ」
俺は全員の攻撃を防御することもなく、そのまま受けた。
全くノーダメージだ。
「何もんだ!?」
「へへへ、バカなおっさんだな。わざわざ攻撃を受けに来るなんて」
「そうだ。そうだ。もう動けもしねぇだろ!!」
「おっさん!!テメェは引っ込んだろ!!」
すっかり俺がダメージを負ったと勘違いして調子に乗る四人。
「引っ込むわけないだろ?女房と部下が襲われそうなのによ」
『はぁっ!?』
俺は全員の手や足を払って服についた誇りを払う仕草をする。
「それで?今何かしたのか?」
『ふざけんじゃねぇ!!』
一通り払った後で、彼らの顔を見て首を傾げながら言いたいセリフランキングに入っている台詞で挑発したら、彼らは簡単に乗ってきた。
俺はその後、適当に失神させた後、皆で警官が来る前にその場を後にした。
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