第352話 コンテストとパンツちゃん

「やっばり海と言えばこれやらないとな!!」


 俺はとあるコンテストの準備していた。


 夏で海と来れば、アニメとかでこういうイベントは定番だと思う。

 

「こ、これは私も参加しないとダメなのかしら?」


 リンネは自分の格好を見下ろしながら顔を赤らめ、モジモジと内股を擦りながら尋ねる。


「もちろん出てくれるなら盛り上がるから助かるけど、リンネの好きにしていいぞ?」


 無理して出るようなイベントでもないので、俺は好きにするように伝える。アニメではよく強制的に参加させられているがな。


「さ、流石にあれだけの人にこの姿をジロジロと見られるのは恥ずかしいわね……」

「それなら別に出なくていいぞ。自薦他薦は問わないけど、出たい奴が出ればいい」

「分かったわ」


 他の奴らにやる前に募集をかけ始めたので、徐々に参加者が集まってきている。


 自分の体を見せつけようとする者。友人に勧められて参加を決める者。賭けに負けて強制的に参加させられる者。エントリーしてくる者達は多種多様だ。


「よし、そろそろ、行くか」

「そうね」


 俺達は準備が整ったので、会場に向かった。


「これより、ミス・コンテスト開催する!!」

『うぉおおおおおおおお!!』


 俺が設置した舞台上でイベントの開始を宣言すると、男達の野太い歓声が辺りに響き渡る。


 そう、これから行われるのはミス・コンテスト。通称ミスコンである。


 リンネがモジモジしていたのは水着姿で数百人の前に立つのが恥ずかしかったからだ。


 リンネの水着姿は俺だけが見れれば良い。だから別に出る必要はない。でも、出たら出たで思い切り自分の嫁を自慢するだけなので、どっちでも構わなかった。


『果たして、一体誰が頂点に輝くのか!!それでは早速いってみましょう!!エントリーナンバー一番、アルクィナスギルド受付嬢、キーラーリー!!』


 最初に入場してきたのは、アルクィナスのギルド本部の受付嬢のキラリさんだ。俺がこの世界に来て初めて冒険者ギルドに行った時に対応してくれた人だ。


 彼女はターコイズに近い緑をメインカラーとしてビキニタイプの水着を身に着けていた。スレンダーな体型ながらキチンと出るところは出て、引っ込んでいる所は引っ込んでいる。


「自己紹介をどうぞ!!」

「は、はい。アルクィナスのギルドで受付嬢をしています。す、好きなものはケーキです。よ、宜しくお願いします!!」

『うぉおおおおおおおおおお!!』


 恥ずかしがりながら挨拶をしたキラリさんは一度舞台から降りる。


 再び男たちが歓声の重低音を奏でた。


 観客席ではグランドマスターがキラリさんを微笑ましく眺めているので、おそらくグランドマスターが強引に参加させたのだろう。


『エントリーナンバー二番、エルフの女王付きメイド、リー、リー、リーナー!!』


 次に舞台に上がったのはエルフ。俺達が良くお世話になっている人だ。


 スレンダーな体型でほんのりとしたふくらみがある。彼女も緑の水着だが、光に照らされた葉のように青々としていて、草花を思わせる模様や装飾があしらわれていて、いかにもエルフが好みそうな色をしていた。


 それにしてもあの子リリリーナという名前だったのか。今まで一度も聞いたことがなかったから知らなかった。


「アレナ様付きのメイドをしております、リリリーナと申します。アレナ様を参加させるわけには参りませんので、私が代わりに参加させていただきました。特技はアレナ様のお世話です。宜しくお願いいたします」

『うぉおおおおおおおおおおお!!』


 スカートはないが、カーテシーを思わせる礼をして挨拶をする彼女。さも当然のようにアレナの世話が特技と言い切る度胸が凄い。


 ちっぱい好きが興奮気味に声をあげていた。


 それにしてもアレナ参加しようとしてたのか?

 王族としてそれはどうなんだ?


『エントリーナンバー三番!!魔王軍情報部所属のサキュバス。ルール―ルー!!』


 次の部隊に上がってきたのは最強の刺客サキュバス。


 この人はオネエ魔王の配下だ。


 最強と言うだけあり、蠱惑的であり肉惑敵であるその体つきに全身から発せられているフェロモン。それらを無理やり暗めの紫色のV字型のきわどい水着の中の収めているようだ。


「宜しくお願いしますね!!ご主人様♪」

『うぉおおおおおおおおおおお!!』


 それでいてあざとすぎる挨拶に観客席にいる男たちは全員が夢中になっていた。


『エントリーナンバー四番!!ヴェーネ近郊に暮らしているラムちゃんの友人マーメイド。ファームー!!』


 次に上がってきたのは厳密な意味では人間ではなく人魚。水着は上だけだが、人魚というだけあってイメージ通り美しく、貝殻で作られた水着のトップを身につけている。


 水の都ヴェーネで俺達を案内してくれた

 

『ラムちゃんに誘われてきました。宜しくお願いします』

「お姉ちゃん頑張れー!!」

『うぉおおおおおおおおおおお!!』


 ラムの声援が送られる。皆ほっこりしながらも雄たけびをあげる。


『最後のエントリーナンバー五番、食事処『剣神』店長、ミサートー、マルミーヤー!!』

「ぶっ」


 最後に予想外の人物が参加してきた。パンツちゃんだった。


 彼女はクールな見た目をしているわりに、結構シャイだったりする。そんな彼女が出てくるなんて珍しかった。


 水色のビキニで見た目のクールさとバッチリあっている。豊満なわけじゃないけど、参加しているメンバーの中で一番均整の取れた体をしていた。


「オ、オーナーにアピールするために参加しました!!宜しくお願いします!!」

「はぁ!?」


 突然パンツちゃんから齎される衝撃。


 なんで俺が狙われてるんだ!?


「ちょっと手を出したんじゃないでしょうね?」

「そんなわけないだろ!?おれはリンネ一筋だ」


 リンネから凄い圧力が発せられたが、俺にはパンツちゃんに一切邪まな感情をもっていない。なんていうか姪っ子でも見ているような気分にしかならない。


「すまん、無理だ!!」

「ふ、振られちゃった!!でも諦めません!!勝つまでは!!」

「えぇ~!?」


 なぜか公開告白と振ることになってしまったが、パンツちゃんに諦める意志はないらしい。グッと拳を握って天を仰いだ。


 一体どうしてこうなった。


『ぶぅううううううううううう!!』


 会場全体からブーイングが俺に届けられる。


 そんなこと言ったって俺にはリンネがいるから答えられないぞ。


「どうするの?」

「どうするって言われてもリンネ以外は興味ないから断るさ」

「はぁ……あれは本気の目をしているからかなりしつこそうね」

「まぁ遠くに離れればその内忘れるだろ。寿命も違うし」

「そうだと良いわね……。でもケンゴを渡すつもりはないから負けないけどね」


 俺は心外なので憮然とした態度で述べると、リンネは面倒そうにため息を吐いてパンツちゃんを見る。


 二人の間には火花が散っていた。


『これで参加者は出そろいました!!皆さま、今お配りしている紙に自分の推すの名前を記入してください』


 全員が出そろって五人が舞台上で並び、その間にゴーレムが観客席に記入用紙と筆記用具を手渡していく。


 それから十分後、全ての票が集まったので、裏で開封作業を行った。


「結果を発表します!!」


―ドゥルルルルルルルルルッ


 開票が終わると、いよいよ結果発表に入る。太鼓の音でドキドキを呷る。


―ドドドンッ


『「グランプリは……ドワーフの魔道具研究家、褐色美少女デメテル氏に決まりましたぁあああああああああああああ!!』

『なんじゃそりゃああああああああああああ!?』


 全く予想外の所の名前が出ててきて観客席と司会進行をしている人物以外は思い切り叫んだ。



■■■■■



 薄暗く、沢山の物が雑多に溢れる室内。


「クシュンッ。風邪かのう……ズズズッ」


 どこかの褐色ロリはくしゃみをした後で、鼻を啜って窓の外を見つめるのであった。


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