第367話 秋

 俺たちは再び島に戻ってきて四季を堪能する。春、夏と来たら当然次は秋。今回は一年中秋の区画をエンジョイすることにした。


「今日は狩りを行いたいと思う」

「狩りって猪モンスターとか鹿モンスターとかを狩るあれ?」


 俺が宣言すると、リンネが所謂狩猟を思い浮かべながら確かめる。


「ちょっと違うな。今日狩るのは栗とか松茸とかの動物ではない自然の恵みって奴だ。俺達が魔改造した島だから自然の恵みっていうのは違和感があるけどな」


 しかし今回の狩りはちょっと違う。


 果物狩りと言う言葉があるように、今回行うのは、山の中に分け入って栗を拾ったり、松茸を摂ったりすることだ。


 秋と言えばその辺りの味覚は網羅してしておきたい。ただ、そのまま味わうのも味気ないので、採るところからやろうということだ。


 ただ食べるよりも格段に美味しく感じるだろう。


「それは面白そうね」

「うむ。松茸は故郷でもたまに食べられる御馳走だった故、楽しみだ」


 リンネとカエデも興味があるらしい。


「栗たべたーい!!」

「私はお芋!!」

「僕はサンマがいいな!!」

「俺は肉!!」


 子供たちも秋の味覚を上げて涎を垂らしている、キースを除いては。キースはどこまでもブレないやつだ。


「にゃーん(僕は牡蠣ってやつが食べたいなぁ)」


 イナホも魚介に目がないのは変わらないが、一応旬の物を選んでいる辺りはキースよりは柔軟性がある?


 いや、肉にはそれぞれに旬と言う物は余りない気がするから、あくまで魚介には季節によって取れないものがあるから、というのが正しいか。


「それじゃあ、秋の味覚狩りに出発だ」

『おー!!』


 何はともあれ今は味覚狩りの時間だ。俺達は山に向けて出発した。


「すっごい綺麗ね、山」

「ああ。ゴーレムたちが頑張ってくれたからな」


 秋の山は紅葉真っ盛り。なぜか枯れずにその色を保つように品種改良されていて一年中紅葉を楽しむことが出来る。


 味覚狩りのついでに紅葉狩りもして秋ならでは景色も堪能しながら山へと歩いていく。


「にゃーん!!(あ、お魚だ!!)」


 幅十メートル程の川に差し掛かると、掛かっている橋の上から身を乗り出して丸々と太った鮭が泳いでいるのを目ざとく見つけるイナホ。


 まぁ、まだ時間は早いし、寄り道も悪くないか。


「ちょっとここで釣りでもしていくか」

『はーい』


 俺達は栗や松茸の前に釣りをすることにした。結果として入れ食い状態で数十匹の鮭型の魚が沢山捕れた。ほとんど釣り堀みたいなレベルだった。


「後で食べような」

「にゃにゃーん!!(わぁーい!!)」


 沢山魚が獲れたのでイナホは嬉しそうに飛び跳ねていた。


「よーし、ここではまずは栗を拾うぞぉ。ただ拾っても面白くないだろうから、一番多く拾った人には一番好物の料理を作ってやる」

『やったぁ!!』


 山に着いた俺達は早速栗を拾い始める。子供たちには一番拾った人にご褒美があることを伝えてやる気にさせた。


「時間は今から一時間だ。準備はいいか?」

『はぁーい!!』

「それじゃあ、よーい、スタート!!」

『わぁー!!』


 俺の合図に従って子供たちが駆けだしていく。


「優勝者はカエデ!!」

「うむ!!」

「っていや、なんでお前が一緒になって参加してんだよ!!大人は対象外だ!!」


 あっという間に一時間が過ぎて、一番量を採ってきたカエデを勝者にしてしまったが、子供たちの勝負なので無効にした。


『おねえちゃんずるーい!!』

「ほら、子供たちもこう言ってるじゃねぇか」

「ふっ。時には理不尽が降りかかってくるということを教えねばならんのだ」


 子供たちが頬を膨らませて抗議しているのを示すと、カエデはいかにも分かった風なことを呟く。


「とりあえず、四人の中で一番多かったのは、なんとリリでした!!」

「わぁーい!!」

「負けちゃったぁ!!」

「つよーい!!」

「くっ。無念……」


 可笑しなことを言っているカエデは放っておいて、俺達は子供の順位を発表した。


「ということで今日は秋の味覚の他にリリの食べたい物も作ってやるぞ。考えておけよ?」

「はーい」


 こうして栗拾いはリリに軍配が上がった。松茸も同じような条件でやったところ、再びカエデが一位をとったが無視した。松茸はキースが一位をとった。


「ドラゴンステーキを所望するぜ!!」


 と、すぐに食べたい物を上げていた。


 秋の味覚狩りを堪能した俺達はバーベキューよろしく秋の味覚を網で焼いて食べることにした。


 松茸に、鮭などの他に沢山の秋の食材を倉庫から取り出して網の上にのせて焼いた。


『う・ま・い・ぞぉおおおおおおおおおおおおおお!!』


 彼らは各々の好きな食材を口に運ぶと、一瞬恍惚な表情をしたかと思えば、どこかで聞いたことのあるようなセリフを揃えて言う。


 その後、子供たちも自分で焼きたいと思ったらしく、俺は教えながら彼らにも野外で食べるご飯の良さを堪能してもらった。


 俺達は食べ続けて気づけば大満足していた。

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