第359話 異世界転移
「よう、光野君、久しぶりだな」
「はい、おじさん久しぶりですね」
一週間後、俺はアルクィナスの郊外へと訪れていた。
その理由は勿論高校生達を地球へと連れて帰るためだ。ただ、一度帰って見てこっちに戻って来たいのであれば、連れて帰ってくるし、そのまま残るのなら残ればいいと思う。
その際に、異世界で得た物は全て没収することになるけどな。
まぁ最悪、俺もちょいちょい地球には俺が元々購入していた小説とか、Web小説とか、アニメとか、漫画とか、映画とか、そう言ったサブカルチャーを仕入れに行くと思うから、異世界に残ることを選択したもののどうしても合わなかっただとか、日本に戻ったけど、異世界の感覚があって上手く馴染めないとかあれば、その時に連れて行くのはやぶさかではない。
ただ、最初からそれを言っておくと、彼らの決定が軽いものになりかねないので言わないが。
「それで、皆の準備は整っているか?」
「はい。なぁ皆?」
『はい(おう)』
俺が準備が出来ているか尋ねると、光野君はしっかりと頷き、後ろにいる他の高校生たちにも確認するが、全員が頷いていた。
「それじゃあ、早速行くか」
俺は全員を転送機能で船ではなく、メサイアの観覧室へと案内した。
「なんだこれ!?すっげぇ!?」
「おじさんこんなの持ってたの?」
「やっぱり巻き込まれ召還されたおじさんはチートだったんだぁ!!」
「おじさんの所に就職してよかったねぇ」
転送で送られた先は異世界の上でさえなく、そこは真っ暗な空間で、目の前には丸く青い星が浮かんでいるのが見える。
メサイアは既に宇宙空間で待機していたので、転移し終わった瞬間に宇宙の景色が目に飛び込んでくるというサプライズをしたわけだ。
案の定高校生たちは島に来た時以上に興奮して目を輝かせている。
「帰る前にちょうどいいお土産話になるだろ。まぁ話しても誰も信じてくれはしないだろうけどな」
俺は興奮している高校生たちに声をかける。
「そうですね、確かにこんな風景を見たと言っても誰も信じてはくれないでしょう」
興奮して誰も俺の声が聞こえていない中、光野君が反応してくれた。
思えばこの子もすっかり落ち着いたものだな。
「異世界の星はこのくらいにするとして早速地球に戻るか」
しばしの間、高校生の様子を眺めていた俺だが、皆の興奮が落ち着いたころに転移を提案する。
「はい、お願いします」
『お願いします!!』
高校生たちは万感の思いを秘めた表情で俺の提案に頷いた。
「それじゃあ席に座ってのんびりしていてくれ」
『分かりました!!』
高校生達を観覧室に残して俺は皆が待つメインブリッジへと転移で移動した。
「待たせたな」
「そうね。本当に楽しみだわ!!」
「うむ。主君の故郷には興味がある」
俺がメインブリッジに戻ると、異世界人メンバーはメンバーでうずうずとして興奮が抑えきれないと言った様子だ。全員がメイド達が座っている机とは別に余っている席に座っている。
「楽しみ~」
「面白そう~」
「人間しかいないんだよね」
「肉、肉、肉」
「にゃーん(魚、魚、魚)!!」
子供たちとイナホも興奮している。キースとイナホは肉と魚が食べたいだけだけどな。
「さて、それじゃあ、地球のある次元に転移しますか」
『了解』
皆も待ちきれないみたいだし、早速転移を行うことにする。
「それじゃあ、バレッタ頼むわ」
「承知しました、ケンゴ様。異次元転移のシークエンスを開始します」
俺がバレッタに指示を出すと、バレッタが端末をカタカタと叩いて転移の作業を進める。
「次元エンジン始動。出力〇%……十%……五十%……百%。次元転移が可能になりました。続いてそのまま異次元転移を実行いたします。転移時間の調整を実行。完了。転移人員の能力調整の実行。完了。転移の必要条件を満たしました」
バレッタだけでなく、他のアンドロイド達も端末を操作し、転移の手順を進めていく。
「これより、異次元転移を行います。乗員は席に着席し、シートベルトを締めてください」
バレッタが艦内放送で高校生たちに注意を促す。
「乗員全員の着席及びシートベルトの着用を確認。異次元転移までのカウントダウンを開始します。十……九……八……七……六……五……四……三……二……一……転移!!」
館内放送を繋いだまま、バレッタは転移を実行した。
目の前に見えていた景色がグニャリと歪み、まるでコーヒーに牛乳が混ざる時の渦の様な景色が映ったかと思うと、その景色にメサイアが突っ込むような形で発進した。
渦に吸い込まれた瞬間、景色がパッと移り変わり、目の前には教科書やテレビなどで馴染み深い青い球体が映し出されている。
「転移が完了しました。第三十四次元世界、太陽系第三惑星地球。召喚時間直後の時間軸に到着しました。お疲れ様でした」
バレッタの言葉で転移の完了が知らされる。
「あれが俺が生まれた星。地球だ」
「私たちの星も綺麗だったけど、本当に青くて綺麗ね」
「うむ。あれほど綺麗な星があるとはな」
俺がリンネとカエデに地球の自慢をすると、二人は地球に見とれて呆然と呟いた。
そうだろうそうだろう。
俺は二人の様子に満足げに頷く。
「ちょっと高校生たちにサービスして少し宇宙を航行しよう」
「承知しました」
しばし、地球を眺めた後で、せっかく自分たちが住む世界の宇宙にやってきたので、太陽系の各惑星の近くを巡って見せることにした。
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