スローライフ、そして……
第337話 驚愕の事実
「今日は森を切り開いて拠点と畑になる場所を作ります」
俺は眼鏡をかけて先生風に皆に告げる。
「なんでアニメの先生風なのか分からないけど分かったわ」
「うむ」
リンネはちょっと困惑気味に、カエデは鷹揚に頷いた。
あんまりちゃんとした学校の概念がないみたいだから分からない
「はたっけ、はったけ♪」
「耕すの楽しみ」
「僕も」
「畑から肉は生えるかな」
「にゃーん(僕は傍で見てるね)」
子供たちは早く畑を作りたいようだ。イナホは傍に偶々あった切り株の上でミャンモンアイトを作ってスピースピーと寝息を立て始める。
相変わらずのマイペースだ。
「それじゃあバンバン切り倒していこう!!」
『おおぉ!!』
掛け声を出したが、森を切り開くのは大人たちの仕事だ。
―ズシーンッ
―ズシーンッ
―ズシーンッ
―ズシーンッ
―ズシーンッ
俺とリンネとカエデがそれぞれの技で中々立派に育った木々を切り倒し、倉庫に仕舞っていく簡単なお仕事。切り株は魔法で掘り起こしてそれもまた倉庫に入れていく。
「隊員集合!!」
『はーい!!』
「君たちに任務を与える!!切り株を取った後の凸凹になっている場所を平らにしてするように!!」
「はーい!!」
俺は退屈しないように子供たちにも仕事を与えた。
子供たちは素直でいい子たちなので、みんなしっかりと自分たちの仕事をこなしている。それどころか普段やらないことなのでとても楽しそうだ。
その様子を尻目に俺達はどんどん森を切り開いていった。
「よーし、このくらいでいいだろ」
「やっと終わったわね!!」
「こういう労働もなかなかいいな」
それから丸一日かけて俺達は拠点と畑を作るのにふさわしいだけの森を開墾した。数キロ四方にわたって開墾したけど、この島のほとんどが森に覆われていたので、問題ないだろう。
リンネとカエデは輝く汗を流し、にこやかな笑顔を浮かべている。
「おなかすいたぁ!!」
「わたしもぉ!!」
「僕もぉ!!」
「にくぅうううううううう!!」
うっかり俺達は夢中になって昼休憩も取らずに作業しっぱなしだったのでおなかがペコペコである。
こんな時はあれが良いだろう。
「それじゃあ、今日は焼肉にしよう!!」
『うぉおおおおおおおおおおお!!』
俺が今日の夕食を提案すると、全員が沸き上がった。そこにはいつの間にかイナホも混じっていた。
全く……鼻が利くな、動物だけに。
俺は早速倉庫からテーブルセットとバーベキューセットを出して設置する。
「早く早く!!」
「おじちゃん急いで!!」
「おじさん早く!!」
「ハリーハリーハリーハリー!!」
「主君急ぐのだ!!」
子供たちが待ち切れずに俺を急かしてくる。いや、子供だけじゃなくてカエデも混ざっていた。
全くご飯になるとこらえ性なさすぎだぞ。
知らない人からご飯をもらって付いていってしまいそうだ。
まぁそんなことはないだろうけどな。
「はいはい、おとなしく待ってろ。すぐに用意するからな」
俺は皆からの攻撃をいなしながら準備をこなしを設置を完了させた。
「それでは、俺達の理想のスローライフの開幕を祝して焼肉パーティを行います」
『わぁああああああああああ!!』
拍手と共に皆早く肉を出せと目をランランと輝かせている。
「それじゃあ、肉を出すから各自好きに焼いて食べてくれ。肉はたくさんあるから急がないようにな!!守らない奴は食べさせないからな!!」
『はい!!』
急いで争奪戦になったりすると、日が危ないのできちんと言い聞かせると、皆がきちんと返事をしたので子供たちに人気であろう定番の肉をたくさん出してやった。
だから、子供たちに混ざるのは止めろよカエデ。
全く嬉しそうに滅茶苦茶ニコニコしてるんだからな、まぁ楽しみにしているところを邪魔するのも野暮だろうし、今日はめでたい日だから許してやるか……。
肉を焼く場所も複数用意したから埋まって灼けなくなるということもないだろう。
俺は誰もいないバーベキューセットで肉を焼き始めた。
俺が子供たちとカエデが仲良く肉を焼いて食べている様子を微笑ましく見ながら、俺も肉を焼いて食べ始めると、隣にリンネがやってきて彼女も俺と同じ場所で肉を焼いて食べ始める。
「自分たちの住む場所を一から開墾して作るっていうのも悪くないわね」
「だろ?こういう生活結構してみたかったんだよ。こっちに来る前は机に座っての仕事がほとんどだったし、帰ったら寝るだけの生活だったからな。田舎でのんびり暮らしたいと思っていた」
リンネが肉を焼きながら今日の開墾の感想を述べた。俺は自然に囲まれた風景を見て地球を思い出しながら、しみじみと語る。
「アニメを見る限りで想像するしかないけど、ケンゴの住んでいた世界はかなり大変そうだものね」
「そうだな……。それでもいいところも一杯あったし、俺が住んでいたところをリンネに見せられたら良かったんだけどな」
「別の世界じゃ行きようがないしね」
「そうだな」
俺とリンネはお互いに残念に思いながら美味い肉を食べる。
『行けますよ?地球』
しかし、そんな時思いもよらない答えがバレッタから齎された。
「え?いや、行けないって言ってたよな?」
「確かそうだと思っていたけど」
俺とリンネは顔を見合わせて困惑する。
『この星の私たちの時代の遺跡をケンゴ様が掌握されたので、異世界転移機能のロックが解除されました』
「そんなことまで出来るのか……っていうか俺は全ての超古代遺跡を制覇してたのかよ……」
俺は聞いていなかった情報に思わず呆然となる。
『前所有者は控えめに言って天才ですので』
「バレッタを作れるような人間だからな、それもそうか……」
バレッタのドヤ顔が透けて見えるような声色に俺はとほほと肩を落とした。
それはともかく地球にいけるのか……。
「リンネ、地球に行ってみないか?」
「ええ、ケンゴが良いなら行ってみたいわ」
「そうか、それじゃあ、ちょっと開拓が落ち着いたら、行ってみるか」
「そうね」
俺達は開拓が一段落したら地球に行くことを決めた。
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