第338話 四季

 数日後、俺達は島の開墾を終えた。


 数日もかかったのは、この島を四国のように四分割してそれぞれの地域に拠点となる場所と畑を作ったからだ。


 せっかくだから遺跡の力をふんだんに使った島にしたいと思った結果、そういうことになった。


「よーし、四カ所の開墾を完了したから、本格的にスローライフを初めて行きたいが、その前にやることがある」

「それはなにかしら?」


 リンネが俺に尋ねた。


「それは季節の設定だ」

「季節の設定?」


 俺の答えにリンネが首を傾げる。


 まぁそれだけ言っても何を言っているか分からないよな。


「ああ。世界には春、夏、秋、冬という四季があるよな?」

「ええ、そうね」


 俺の問いかけてリンネは頷く。


「この島をなぜ四つに分割したかと言うと、それはそれぞれの区域を一つの季節を割り当てようと思ったからだ」

「例えば、北西を春、北東を夏、南西を秋、南東を冬、みたいな?」

「そういうことだ。今回天空島の遺跡を手に入れたことで天候の操作が出来るようになった。確認したが、問題なく出来るそうだ」


 俺がもう少し分かりやすく具体的に話すと、リンネはそれを理解して答え合わせしてきた。おれはリンネの答えのしっかりと頷いて、そうすることに至った経緯を話した。


「それは面白そうね」

「うむ、聞いただけでワクワクしてくるぞ」

「面白そう!!」

「楽しみ!!」

「そんな場所聞いたことない!!」

「肉あるのか?」

「にゃーん(暖かいところで一年中寝てられそう!!)」


 俺達の会話を聞いていたリンネ以外のメンバーもある程度内容を理解したようで、一人を除けば全員目を輝かせる。


 そりゃあ、自然を操り、それを固定できるっていうんだから、驚きだよな。


「そう、それでどこをどの季節にするかだが、個人的には山の多いところは秋か冬、川が多いところは夏、平野が多いところは春と言った感じが良いと思う」

「どういう理由でそうなったか聞いてもいいかしら?」


 俺がどういう場所をどの季節にするのかを伝えると、リンネはその理由を聞きたがった。


「ああ。冬は基本的に何もないというか、雪で遊ぶくらいしかできないからな。平地や川が多いところを冬にしてしまうと、平地で野菜を育てたりできなくなるし、川で遊んだりもできなくなる。それは勿体ないからな。それに山に秋に真っ赤に染まる植物を植えれば、滅茶苦茶良い景色になると思うんだよ。それから平地に関してはやはり安定した気候であれば作物も育てやすいだろうし、何かして遊ぶにしても暑すぎなくていいかなと思う。川が多いところが夏なのは泳いだり、釣りをしたり、バーベキューをしたり出来るからな。楽しめると思ったんだ」

「なるほどね。考えがあるなら私に異論はないわ」

「うむ、私もそれでいいぞ!!」

「私も」「あたしも」「僕も」「俺も」

「なーん(僕もそれでいいよぉ~)」


 俺が少し長めに話すと、皆納得したのか俺の案で行くことになった。


「それで、ケンゴの案の場合、この島だとどこがどの季節になるのかしら」

「北西が冬、北東が春、南西が秋、南東が夏になるな」

「それってすぐに出来るの?」

「どうだろな?」


 俺が島の季節の割り当てを説明すると、思いもよらぬ質問が返ってきたので、俺はバレッタが出来てくるのを期待して問いかけた。


『大丈夫ですよ。シロユリに指示を出せば一瞬で季節を設定してくれるはずです』

「やっぱり超古代遺跡の技術はすげぇな……」

「ホントね……」


 普通に出来てきて答えてくれるバレッタ。流石だ。


 それにしても一瞬で出来てしまうと聞いて俺たちは呆然となった。


 超古代遺跡は自然さえも支配していたんだなぁ。


『そのくらい前所有者にかかれば造作もないことです』


 やっぱり前所有者はすげぇや。


「それじゃあ、すぐにやってみましょうよ」

「それもそうだな」


 我に返ったリンネが俺にワクワクしているのを隠すこともせずに促すので、俺は早速頼むことにした。


「シロユリ、早速で悪いんだが、この島は見えているか?」

『はいなのです。見えています』


 腕のインフィラグメを使ってシロユリに呼びかけると、すぐに返事が来る。


「それじゃあ、その島を良い感じに四つに分割して、北西が冬、北東が春、南西が秋、南東が夏で割り当ててくれるか」

『承り~なのです』


 俺が指示を出すと、その気候は一瞬で変わった。


 俺達が今いるのは北西。


 つまり……。


『さっむ!!』


 一瞬で冬になったので、俺以外全員がそう叫んだ。


 俺は基本的にインフィレーネに守られているので感じなかったが、このままにしておくことも出来ないのですぐに春の拠点予定地に転移した。


「いやぁ……寒かったわ」

「うむ。思わず、尻尾を又に挟んでしまったぞ」


 リンネとカエデが体を震わせながら俺に文句を言う。子供たちも自分の体を抱いてガタガタと体を震わせていた。


「すまんすまん。うっかりしていた」

「全くちゃんとしてよね」

「本当に悪かったな。お詫びに今日はカレーにするから許してくれ」

『やったぁ!!』


 俺が苦笑いを浮かべて頭を掻いて謝罪すると、リンネが不機嫌そうに返事をするので、ご機嫌を取るために今日は皆大好きカレーにすることにした。


 そした皆機嫌はアッサリとよくなったとさ。


 めでたしめでたし。


 っていうか皆ちょろすぎないか!?

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